村木厚子氏 リーダーに欠かせぬ「聞く力・伝える力」
厚生労働省 村木厚子元次官(上)
私のリーダー論就いたポストに育てられる
「左側に耳、右側に口、その下に王があります。たくさんの人の意見を聞き、自分の考えを整理して、周りに伝える。聞くと語るという2つの力がリーダーには重要だというお話でした。私は納得しました。リーダーはこの2つの力を持つものだと自分に刻みつけたのは酒井さんの言葉がきっかけです」
「リーダーはみんなの話を聞き、方向を定め、それを語るという重い役割を背負っています。それが認識できました。決め方はさまざまで、部下の言うとおりにするのでもいい。でも決めること、それに最後まで責任を持つということはリーダーにしかできません」
――女性は自分の実力を過小評価する「インポスター症候群」に陥り、昇進に消極的な人も目立ちます。
「私も自分はポストに追いついていないと感じていました。係長になったときは今ならいい係員になれる、課長補佐に昇進したときは今だったらいい係長になれるのにと思いました。ポストによって、見えてくるものが違うからです。昇進は階段を上るのに似ています。下にいたら背伸びしたり、ジャンプしたりしないと見えないものが自然と見えてくるようになるのです」
「少し力が足りないと思っても、そのポストに就いたからこそ力がつくことがある。私は他人と競うのは得意でないのですが、自分の成長という物差しであれば、それを励みに頑張れると思いました。そうして手応えをつかみ、ようやく自信がついてきたのは40代になってからでした」

郵便不正事件の無罪判決後、記者会見で笑顔を見せる村木さん(左)(2010年)
――尊敬するリーダーはいますか。
「障害者自立支援法をつくったときに厚労相だった尾辻秀久さん(現参院議長)の姿勢に学びました。私が課長時代のことです。障害者福祉を前に進めた法律ですが、医療と介護の利用者負担ですごくもめました。当事者にも反対する人がいて、一度は廃案になったのです」