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一歩引き後の評価待つ

「法案が通った後、尾辻さんは『いろんな意見がある。この判断は後の人がする』とおっしゃいました。自分たちが正しいと思って法律をつくったのですが、裏返せば反対する人が間違っているということにもなります。尾辻さんは誰が正しいというのではなく、一歩引いて評価を待とうと考えたのでしょう。怒りや人に対する負の感情に流されない。リーダーはこうあらねばならないと思いました」

――旧労働省は他に比べて女性官僚の多い役所でした。

「女性の先輩にも励まされてきました。2年上の先輩に『あなたはどっちタイプでいく?』と聞かれたことがあります。初の女性労働次官となった松原亘子さん、証券取引等監視委員会委員長も務めた佐藤ギン子さんのどちらを意識するかという意味です。松原さんはバリキャリですごく強いリーダー。佐藤さんはフェミニンにみえるけれど、実は強いタイプ。私はどっちも無理だなと思い、何も言えずにうつむきました」

「すると、彼女は『あなたが第3のタイプをつくりなさい』と言ったのです。この言葉が私を長い間、救ってくれました。まだリーダーになる覚悟すらなかった30歳代のことです。彼女は私がリーダーとなる可能性があるのを示唆し、自分に合ったやり方を見つけなさいと言ってくれたのです。そんな先輩に覚悟を決めさせられながら歩いてきたと思います」

(ダイバーシティエディター 天野由輝子)

社外取締役や女性支援も
むらき・あつこ 1955年高知県生まれ。78年高知大卒業、労働省(現厚生労働省)入省。雇用均等・児童家庭局長だった2009年、郵便不正事件にからみ逮捕、起訴されたが、10年9月の裁判で無罪が確定した。13年7月に厚労次官に就任、15年退官。17年から津田塾大客員教授。伊藤忠商事の社外取締役や困難を抱える若い女性を支援する団体での仕事もこなす。小さいころから本の虫で164日間に及ぶ勾留生活で149冊を読んだ。「読書が精神安定剤になった」と振り返る。

お薦めの本


「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリング他著)
 今起きているさまざまな現象を多面的に捉えるための見方を教えてくれる。客観的にものを見ることの大切さに目を見開かされました。
[日本経済新聞夕刊 2022年10月27日付]

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