新規事業成功、鍵はデータより信念 部下にチャンスを
ブラザー工業 小池利和会長(下)
私のリーダー論――社内での情報発信もいろいろ工夫しています。
「私の考えや行動を発信する社内ブログ『テリーの徒然(つれづれ)日記』は社長就任前の05年末に始めました。会長になった後、半年ほど中断したこともありましたが、自分で感じたり体験したりしたよしなしごとをつづっています。話題は趣味の将棋や花見、ゴルフ、野球など様々です。ただ、自分の話にとどまらず、家族のことも隠すことなくさらしてしまい、妻にはよく怒られます」
ブログで発信 1100回に
――ブログが長く続いている理由はなんでしょうか。
「現在は隔週で、分量は1回につき3000~4000字くらい。回数は延べ1100回以上に及んでいます。社長や会長といっても普通の人間であり、従業員に身近に感じてもらうことで何でも話してもらいたいという思いがあります」
「従業員は職場にいる時間が長いので、楽しく過ごせるヒントを提供したいです。何事にも好奇心を持ってほしいという願いもあり、書き続ける苦労に勝ります。7割の従業員が私のブログを閲覧しており、アクセス数はいまも減っていません」
――社長、会長と14年がたちます。組織や文化の変化を感じることはありますか。
「サステナブル(持続可能)な成長が求められる時代です。かつては売り上げや利益が良ければ評価されました。今はコンプライアンス(法令順守)はもちろん、社会や環境への貢献が求められます。誰もが働きやすい職場や有事に強い組織も必要です」
「規模が大きくなるほど縦割り色が強まり、自分の部門だけに拘束されがちです。いわゆる大企業病ですね。年功序列の壁も薄めなければなりません。社長になって以降、私の部屋に来て『こんな事業がやりたいから100億円欲しい』と訴えるような社員がほとんどいないのはさみしいものです。戦術は必要ですが、失敗を恐れず、挑戦する意欲を持ってほしいです」
(角田康祐)
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プロレスラーから愛称
「テリーさん」の愛称は米国に赴任した約40年前、「本名の『利和』は発音しにくい」と考えたのがきっかけだ。頭文字である「T」にひっかけ、当時ファンだったプロレスラー「テリー・ファンク」から拝借し、自ら名乗った。
若手社員も「小池会長」ではなく、「テリーさん」と呼ぶ。
名前を呼ぶときに「相手の肩書を付けない」ことは社内ルールにも定めている。上下関係を意識させず、互いに距離を縮め、風通しをよくする狙いだ。
「お節介」の心を持ちましょう。自分の業務領域にかかわらず、いろいろなことに首を突っ込み、相手に指摘してあげてください。他人の誤りは見て見ぬふりをせず、「それ間違いだよ」と言える勇気も持ってほしいです。