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サイボウズで学び直すのは社員だけではない。20年からは地方自治体から職員の受け入れも始めた。4月に埼玉県庁から派遣された椎名元はサイボウズの営業チームで自治体向けにキントーンを販売する仕事を担う。「電話やファクスが中心の県庁の働き方とは全然違いました」

もともとプログラミングの知識はあったが、なかなかデジタルツールが役所で普及しないことに疑問を持っていたという。椎名は「ここでチームビルディングなど組織運営のノウハウを深掘りして学び、県庁に戻ってから生かしたい」と話す。サイボウズにとっても顧客である自治体の現状を知る者が社内にいるメリットは大きい。

日本企業の常識にとらわれない仕組み作りで「学び続ける集団」を目指すサイボウズ。その原点にあったのがかつての挫折だった。ソフト売り切り型のビジネスモデルに陰りが見えて、03年には創業後初めての減収減益となった。そこで再起を期して「社員のハングリー精神を復活させたい」と採り入れたのが徹底した成果主義だった。

楽天やライブドアをまねてM&A(合併・買収)に打って出たことも裏目に出て、社員の人心が離れて退職者が続出する事態を招いてしまった。青野は「弱点を見つめ直す必要がある」と反省し、社員の声に耳を傾ける中で目指すようになったのが「社員一人ひとりが主体的に考えながら会社を作り上げていく」というボトムアップ型の組織作りだった。

今では社員に学びを推奨するものの、強制はしない。「リスキリングしない人は、そうすることで起きることに覚悟を持って受け止めないといけない」と冷ややかに語る。「デジタル化が進んで社会が変わり、すべての産業のビジネスモデルが変わろうとしている。リスキリングしないで生きようというのは、よほど腹の据わった経営者ですよ」

そう言うと、青野はこう付け加えた。「まあ、僕にはできないですけどね」。不敵な笑みには10年以上をかけて失敗の教訓から築き上げた学ぶ集団への自信がにじんでいた。

=敬称略

(山口和輝)

[日本経済新聞電子版 2022年6月22日付]

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