共感の輪広げる指導力 国際人権団体日本代表・土井氏
ヒューマン・ライツ・ウオッチ 土井香苗日本代表(上)
私のリーダー論組織・世論の雰囲気変える
――人権活動に興味を持ったきっかけは何でしたか。
「中学3年生のころ、国語の授業で犬養道子さんの著書『人間の大地』と出合いました。アジアやアフリカの難民キャンプを巡ったルポルタージュで、悲惨な実態に衝撃を受けました。まかりとおっている不正義に対する怒りを覚え、次第に難民問題に関心を持つようになり、将来は難民支援や国際人道支援に携わる仕事をしたいと思いました」
――大学在学中に司法試験に挑戦したのはなぜですか。
「安定した仕事に就ける資格を取りなさいという親からの強いプレッシャーを受けたからです。親への反発を覚え、時には精神的に不安定になりつつもストレスを勉強にぶつけ、なんとか合格することができました」

エリトリアで法律作り支援のボランティア(1997年ころ、当時のムサ検事総長(右)とその子どもたち)
「試験勉強からの解放感や、くすぶっていた人道支援に携わりたいという情熱に動かされて、ボランティアにまい進します。アフリカ北東部のエリトリアで法律作りを支援する機会を得ました。国際交流団体の紹介で同国の法相に直談判して得たチャンスでした。1年間、各国の刑法や検察制度を必死でリサーチしました。日本の司法試験に合格したとはいえ素人の報告が役に立つのか不安でしたが、上司のムサ検事総長(当時)からのねぎらいの言葉に報われました。でもその後、同国は独裁化が進み、現地の友人のなかには後に政治亡命を余儀なくされた人もいます。圧政に人生を翻弄される恐ろしさを実感しました」
――帰国後に弁護士登録をして、難民申請者の弁護などに携わるようになりました。
「01年の米同時テロ発生直後の同年10月、日本で難民申請をしていたアフガニスタン人9人が、一斉に東京入国管理局に強制収容されるという事件がありました。国際テロ組織アルカイダについて何か知っているのではないかという理由で拘束されたのです」
「アルカイダを擁護してきたタリバン政権から逃げてきた難民申請者は当然、アルカイダについて何も知りません。他にも同国からの難民申請者が複数、強制収容されていることが判明しました。不当な収容に怒れる弁護士が『アフガニスタン難民弁護団』を結成し、私も加わりました」