共感の輪広げる指導力 国際人権団体日本代表・土井氏
ヒューマン・ライツ・ウオッチ 土井香苗日本代表(上)
私のリーダー論「巻き込む力」で動かす
――訴えは認められたのでしょうか。
「東京地裁はこうした収容を違法と認めたものの、東京高裁は判断を覆して難民申請者の再収容などを決めました。数年がかりの裁判で我々の訴えが認められることはありませんでした。その間、メディアで訴えを続け、法制度の改正にも取り組みました」
――世論を喚起する活動を展開しましたね。
「04年には750人が手をつないで東京・霞が関の法務省を取り囲む『人間の輪』というイベントをやりました。難民受け入れ制度を所管する法務省に制度変更を迫るもので、メディアに取りあげられました。05年には東京・品川にある収容施設に隣接する公園でキャンドルを手にした400人超の支援者で『ともだち』という人文字を作りました。収容中の難民申請者への連帯の意を込めたもので、こちらも大手メディアが空撮写真を掲載してくれました」
「これはおかしい、何か変えなければという関心を高めてムーブメントにつなげていく上で、メディアへの働きかけも欠かせません。難民申請をしていた少年たちがニュース番組などで取りあげられると、世論の変化を実感しました。国会議員へのロビイングもしていましたが、報道や世論の変化があると政治家や行政が政策変更に向けて動きやすいという面もあります。アフガニスタン難民弁護団での活動が私にとって『巻き込む力』の原点で、現在につながっています」
(竹内弘文)
■「女性枠」撤廃が原体験
どい・かなえ 1975年神奈川県生まれ。98年東京大学法学部卒、2000年弁護士登録。06年ニューヨーク大学ロースクール修士課程修了(国際法)、06年ヒューマン・ライツ・ウオッチ本部のフェロー、08年から現職。司法修習では一時期、検察官を志望した。検察官任官に暗黙の「女性枠」があることに反発し、撤廃に向けた運動を修習生同期と展開した。メディアとも連携した結果、法務省は採用方針を転換した。「市民活動家としての原体験」と振り返る。
どい・かなえ 1975年神奈川県生まれ。98年東京大学法学部卒、2000年弁護士登録。06年ニューヨーク大学ロースクール修士課程修了(国際法)、06年ヒューマン・ライツ・ウオッチ本部のフェロー、08年から現職。司法修習では一時期、検察官を志望した。検察官任官に暗黙の「女性枠」があることに反発し、撤廃に向けた運動を修習生同期と展開した。メディアとも連携した結果、法務省は採用方針を転換した。「市民活動家としての原体験」と振り返る。
お薦めの本
「平壌の水槽」(姜哲煥著、裴淵弘訳)
「アンネの日記」に並ぶ人権弾圧のドキュメントだと、ある活動家に薦められた一冊。現在進行中の弾圧になぜ我々はきちんと向き合えなかったのかと、後世の人は問うだろう。
[日本経済新聞夕刊 2022年9月29日付]