変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

大室 そうなんです。どこかの国の成人男子は崖から落とすとか、得てして通過儀礼って行為自体は非合理的で意味がないんですよ。でも通過することに意味がある。これは日本特有の、新卒採用中心かつメンバーシップ型雇用(職務内容を限定しない雇用スタイル)とも関係しています。まず仲間(=メンバー)になるには、村の一員になるための儀式が必要だったんですよね。

「メンバーシップおじさん」との大きなズレ

塩野 ここ5年ぐらいで、世代間の期待値に大きなギャップが生まれているんですよね。特に高学歴の若い人ほど今まで怒られたことが少ないので、「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイのように「おやじにもぶたれたことないのに」と嘆くようなことが、あらゆる場所で起きている。

メンバーシップ型で出世したおじさんと、親に怒られたことのない新入社員では、物差しがズレていて、「甘えるな」とかはもうアウトなんですよね。豆腐メンタルに対して金づちを打ってしまうようなもの。昔のイニシエーションの多くはアウトなんです。

大室 私と同世代の外資系金融機関の方が「かつて電話は投げるものだった」と、よくわからないことを言ってましたね。

塩野 確かに私が若手の頃は、受話器の替えの在庫がありましたね。シュレッダーにかけた紙を元通りに直せと言われたこともありますし。昔話は冗談みたいな話ですが、今は企業がホワイト化していて、金融でもコンサルでもこんなことはないですよ。

経営共創基盤・共同経営者の塩野さん

経営共創基盤・共同経営者の塩野さん

大室 イニシエーション文化はこの5年ぐらいでずいぶんなくなって、1発アウトになった感じがします。ただ、働き方改革などが進んだ一方で、中間管理職のなかには「俺は先輩からこうされたのに」といまだに腹落ちしていない人もいて……という、まだらな構造が現状じゃないかと思います。

塩野 リモートワークが多くなって、さらにズレが生まれている感じがしますね。ハイコンテクストな社内文化や信頼感の醸成がないままに、いきなり金づちを打ってしまっているケースが増えているんじゃないでしょうか。

しかもCさんの話に残業のこともありましたが、今のスタンダードは、在宅勤務であっても電話やメールをして良い時間が決まっていて、夜や休日まで時間的拘束をしてはいけないんです。

裏を返すと、法律事務所やコンサルなどの若手は時間で取り返せなくなりました。人よりちょっと遅いけれども1.5倍の時間をかけて、素晴らしい結果を出すということができなくなってしまった。特にコンサルの若手は所定の時間内に仕事を終わらせる「短距離走」が過酷になっているという側面もあります。

大室 ルール変更があったということですよね。

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