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政府はリスキリングなどの「人への投資」に「5年で1兆円」を投入する方針のもと、リスキリングを進める個人や企業への助成を拡充している。個人や企業が活用できる、政府のリスキリング支援策について、各省庁ごとに最新動向も交えて解説する。

<目次>
・経済産業省によるリスキリング支援
・厚生労働省によるリスキリング支援
・文部科学省によるリスキリング支援
・政府のリスキリング支援の動向

経済産業省が行っているリスキリング支援

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業

専門家へのキャリア相談、リスキリング講座の受講、それらを踏まえた転職相談や職業紹介までを一体的に実施する事業者に対して補助を行う事業。リスキリングやキャリアアップを考えている個人は、事業者が実施するキャリア相談や転職相談・職業紹介を無料で受けられる。

リスキリング講座は、ウェブデザインや動画制作、プログラミングなどが対象となっている。これらの受講費用について、講座の受講費用の2分の1相当額(上限40万円)が助成される。さらに、リスキリングを経て実際に転職し、その後1年間継続的に転職先に就業していることを確認できる場合は、講座の受講費用の5分の1相当額(上限16万円)が追加で助成される。

事業者ごとの具体的な講座については、順次ホームページ(リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業)に掲載される。

高等教育機関における共同講座創造支援事業

企業などがデジタル・グリーンといった分野の高度人材を育成するため、大学や高等専門学校などで共同講座を運営する費用について、3000万円を上限に、費用の一部を補助する事業。

また、企業側がこうした共同講座による従業員のリスキリングの成果を評価し、待遇に反映する取り組みにも、3000万円を上限に補助する。

現在、データサイエンス講座や、工作機械業界に関する講座などが対象となっており、今後も追加される見込みだ。講座は、事業のHP(令和4年度 共同講座創造支援事業費補助金)で確認できる。

デジタル人材育成プラットフォーム

ポータルサイト「マナビDX」で、デジタルに関する知識やスキルを身につけるための講座情報を提供している。サイトでは、「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」といった役割別、デジタルに関する個人の学習や企業の人材育成の指針として策定された「デジタルスキル標準」に沿ったスキル別に講座を探すことができる。

第四次産業革命スキル習得講座認定制度

IT(情報技術)やデータといった分野の専門的・実践的な講座を経済産業大臣が認定する制度。人工知能(AI)、IoT、データサイエンス、クラウド、高度なセキュリティやネットワーク、IT利活用(自動車モデルベース開発、自動運転、生産システムデジタル設計)の分野の講座が認定の対象となっている。

認定講座は、経産省HP(第四次産業革命スキル習得講座認定制度)で確認できる。講座は、厚生労働省が実施している教育訓練給付金や人材開発支援助成金の助成対象にもなっている。

厚生労働省が行っているリスキリング支援

教育訓練給付金

資格取得のための講座や大学・大学院などを受講・修了した場合に、費用の一部が国から支給される制度だ。

会社員や、週20時間働いているパート、アルバイトの多くが利用でき、支給額の上限も10万円、20万円などと高い。

英語能力テスト「TOEIC」などの身近な検定試験に向けた講座から、税理士のような資格取得のための講座まで対象は幅広いため、リスキリングを始める際には、自身が支給対象になりそうか、必ず確認しておきたい。

制度の詳細については、こちらの記事「教育訓練給付金とは? 注意点や制度の最新動向を解説」も参照してほしい。

人材開発支援助成金

事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した知識やスキルを習得させるための職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度。

「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」などの7つのコースがあり、コースや企業の規模もよるが、経費の75%が助成される場合があるなど、手厚い。コースの詳細や利用条件は、厚労省HP(人材開発支援助成金|厚生労働省 )を参照してほしい。

特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース )

高齢者や障害者などの就職困難者を、ハローワークの紹介により雇い入れ、人材育成に取り組む事業者に、助成金を支給する。さらに、未経験の就職困難者に対し、人材開発支援助成金による人材育成、賃上げをした場合には、通常の特定求職者雇用開発助成金の1.5倍にあたる最大360万円の助成金を支給する。

詳細や利用条件は、厚労省HPにある特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)の紹介ページを参照してほしい。

公的職業訓練のデジタル分野の重点化によるデジタル推進人材の育成

公共職業訓練や求職者支援訓練を実施する民間の機関に対して、WEBデザインやITといったデジタル分野の資格取得を目指す訓練コースの委託費などを増額し、デジタル推進人材の育成をめざす事業。

これらのデジタル分野の訓練コースの受講者に対しても、一定の条件を満たせば、職業訓練受講給付金(月10万円)を支給し、早期の再就職を支援する。

デジタル分野の訓練コースは、「ハローワークインターネットサービス」で検索でき、ハローワークを通じて申し込むことができる。

キャリアコンサルティング

「キャリアコンサルタント」の国家資格をもつ専門家が、ハローワークなどで労働市場や企業についての情報提供、リスキリングや求職活動のサポートをしている。

キャリアコンサルティングでは、自身の能力・強み、関心事や取り組みたいことを記した「ジョブ・カード」を作成し、自身のスキルやキャリアを見つめ直すこともできる。

文部科学省が行っているリスキリング支援

社会人の大学等での学びを応援するサイト「マナパス」

「マナパス」は、リスキリングに取り組みたい社会人が「分野」「資格」「場所」「金額」といった条件で、大学・専門学校などの講座を検索できるポータルサイト。個人だけでなく、社員向け研修を実施したい企業のための講座検索ページもある。

成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業

デジタル・グリーン、AIといった成長分野で能力をもつ人材を育成するため、大学や高等専門学校に対し、リカレント教育プログラムを展開する支援をする事業。

神戸大学の「企業と大学による価値共創を志向するDXエキスパート育成プログラム」、愛媛大学の「地域創生イノベーター育成プログラム」など、全国で計88プログラムが採択されている。

プログラムの一覧は文科省のHP(成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業 )で見ることができる。各プログラムの詳細については、大学など実施機関に問い合わせてほしい。

専門職業人材の最新技能アップデートのための専修学校リカレント教育推進事業

専修学校と企業・業界団体等が連携し、企業のニーズに応えるリカレント教育のコンテンツを作成する事業。

さまざまな職業分野で、その職業の専門人材が最新の知識・技能を身につけられるプログラムを2023年度から順次、提供予定だ。どのような分野が対象になるかは、9月以降、文科省のHPで周知されるという。

政府のリスキリング支援の動向

政府は今後も、リスキリングに対する支援を拡充していく方針だ。年功序列システムのもとで企業が働き手の育成に投資せず、個人も十分に自己啓発をしてこなかった、硬直化した日本企業の状況を変えたい考えだ。

政府が6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」でも、労働者のスキルアップを促し、成長分野への労働移動を円滑にしていくことで、日本企業と日本経済の成長を促す方針を示している。

経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議の合同会議で発言する岸田首相(16日、首相官邸)

経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議の合同会議で発言する岸田首相(16日、首相官邸)

具体策として「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも、リスキリングをした場合は、自己都合による退職の場合でも失業給付が迅速に給付されるよう、取り組みを進めることが盛り込まれた。今後、詳細が議論される見込みだ。(「転職促進へ税制見直し 解雇規制緩和触れず 骨太方針」日経電子版 6月17日付

かつてないほど、リスキリングへの金銭的支援は充実している。自分自身や従業員のリスキリングのため、支援策をうまく活用してほしい。

ライター 吉川真布(株式会社Linkard)

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