人生はロングゲーム 成功を引き寄せる長期の戦略とは
紀伊国屋書店大手町ビル店
ビジネス書・今週の平台「余白」を作る実用的方法
全体は3つのパートに分かれる。パート1は「余白」。忙しい毎日から抜け出す、あるいは少しは「余白」を作る実用的な方法を見ていく。パート2は「集中」。ここが「ロングゲーム」の核心だ。正しい目標をどうやって見つけるのか、見つかったらそれにどのように挑戦していくのか、実行のための戦略や方法を考え、賢い時間の使い方や人間関係を築く方法を見ていく。
最後のパート3が「信念」。障害や挫折を乗り越えて前に進んでいくために必要な要素について考える。戦略的忍耐や、失敗と実験をきちんと区別する考え方、収穫を味わう方法などが提示される。どのパートにも成功したビジネスパーソンの具体的なエピソードがたっぷり語られているので、著者の考え方を実際の行動にひきつけて考えられ、頭に入ってきやすい。
キャリア視点の方法論として参考になるのは、パート2で示される「波で考える」というやり方だろう。キャリアを「学ぶ」「創造する」「つながる」「収穫する」という4つの大きな波に区切って考えるというコンセプトだ。それぞれを「海の波」と考え、「うまく乗りこなし、さらに次の波にスムーズに移行できるように訓練する」というやり方だ。
同店では、5冊の書名を並べた店頭販促(POP)をつけて、ほかの4冊も含めてビジネス書の棚端の平台に展示し、来店客の関心を引いている。「本人の動画だけでなく、切り抜きの動画なども拡散されて多くの読者をひきつけているようだ」と店長の桐生稔也さんは話す。
『伊藤忠』が4位に
それでは、先週のランキングを見ていこう。
1位は『絶対に損をしない不動産投資の教科書』。ビジネスパーソン向け資産運用コンサルティングを手がける著者による不動産投資指南書だ。今回紹介した『ロングゲーム』は2位に入った。3位の『実録バブル金融秘史』は大和証券のMOF(旧大蔵省)担当や証券団体協議会委員長を務めた著者がバブル崩壊後の金融危機を振り返る。4位の『伊藤忠』は本欄の記事「伊藤忠はなぜ強いのか? 歴史とエピソードからひもとく」で紹介した本だ。5位の『中小企業金融の経済学』は、中小企業金融が必要な流動性を供給し効率的な資金配分を行えているかを実証的に検証した研究書。6月刊行の本だが、日経・経済図書文化賞を受賞したこともあり、金融機関の多い大手町で上位に浮上したようだ。
(水柿武志)