安倍元首相が学んだ成蹊小 国際化で海外体験も
成蹊小学校の跡部清校長に聞く
学校のリーダー
図書室の一角にあるパソコンコーナー。テーブルにはパソコンがずらりと並ぶ
一般学級の児童にとっても小学4年時からクラスに合流してくる国際学級の児童の存在は刺激となり、交流が深まるにつれて自然と国際感覚が磨かれていく。さらに5年生の3月と6年生の8月には国際交流プログラムの一環として希望者を対象にした「オーストラリア体験学習」もある。現地の学校で授業を受けたり、ホームステイを体験したり。肌で異文化に触れられる貴重な機会といっていい。新型コロナウイルス感染症の影響でこの1、2年は現地へ赴くことはできなかったが、コロナ禍が一段落した後を見据え、「もう1校ほど現地の学校を増やし、参加希望者のニーズに対応する予定」と跡部校長は意気込む。成蹊中・高の校長時代に自ら海外を回り、仲間たちと国際交流プログラムを拡充させてきた実績を踏まえた発言だろう。
学校現場ではデジタル社会に対応するため、ICT(情報通信技術)教育が盛んになっている。成蹊小にも図書室の一角に「パソコンコーナー」があり、授業にも活用しているノートパソコンがずらりと並ぶ。もちろんデジタル機器を使いこなせるのにこしたことはないが、一方で長時間パソコンなどに向き合うことで視力低下など健康面への影響も無視できない。
ICT教育を単に推し進めるのではなく、心の教育や実体験ともバランスを取りながらやっていく、というのが跡部校長のスタンスだ。成蹊小として力を入れているひとつに探求学習があるが、そこでもICTと実体験がセットになっている。小3から始まる「こみち」の授業でパソコンの使い方を学びながら、大豆を育ててしょうゆを造ったり、コットンを育ててTシャツにしたりといった具合だ。
成蹊小は、慶応義塾幼稚舎や青山学院初等部、学習院初等科と並ぶ東京を代表するブランド小学校だ。出身者にも華やかな著名人が少なくない。安倍元首相や出光興産の天坊昭彦元社長、小学校の新校舎をデザインした建築家の坂茂氏や元フジテレビアナウンサーの高島彩さんなど政治・経済から文化・芸能など多岐にわたる分野で活躍する。小学6年生の「夏の学校」には「水泳師範団」として一貫校の大学生や高校生の有志らが協力し、後輩の小学生たちの遠泳をしっかりとサポートするのも恒例という。「みんな一貫して成蹊愛が強いのも自慢の一つ」と跡部校長はいう。
季節のうつろいを跡部校長は校舎の窓から見える「木々の変化」でこれまで感じとってきた。成蹊小の校長に就任してからは、それが「昆虫など生き物」に変わった。子どもたちが「先生、学校でカブトムシ捕まえたよ」とか「家でカマキリの卵が無事ふ化したから持ってきた」とかいって、見せてくれるからである。「成蹊小の子どもたちはつくづく実体験が豊かだなと感じます。卵をふ化させるコツなど逆にこちらが教えてもらっています」と語ってやまない。休み時間に校長室にやって来る成蹊小の児童たちとのたわいない雑談のひととき。跡部校長にとってそれが今、1番のリフレッシュタイムになっているのは、長年の夢がようやく実現したからに違いない。
(堀威彦)