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症状をがまんする状態が続く一方で職場の理解や支援が得られず、仕事との両立に悩む女性は多い。降格や昇進辞退する人もいる。調査にかかわった日本女子大の周燕飛教授の推計によると、更年期症状が原因で離職した女性は過去3年間で46万人。女性の離職が1年続いた場合の経済損失は4200億円にのぼる。周教授は「離職を食い止める防波堤が職場に必要だ」と指摘する。

更年期世代は、管理職など職場の中核を担う年代でもある。社員の健康は経営課題だという認識が広がる今、女性特有の健康課題への対応も不可欠だ。更年期について理解を深めたり、休暇制度を整えたりする企業も目立ち始めた。

ロート製薬はエクオールをつくれるか調べる検査を提供する。女性ホルモンに似て更年期症状を和らげる働きがあり、体内でつくれる人は2人に1人とされる。希望者にはサプリメントを提供。「体について考えるきっかけにしてほしい」(人事総務部)という。

大和証券グループ本社は休暇を整備

NHK調査では、職場や国に「休暇を使いやすい職場環境の整備」を望む人が44%と最多だった。大和証券グループ本社は生理休暇の名称を「エル休暇」と改め、更年期の体調不良の際にも使えるようにしている。

政治も動き出す。「研究の成果を支援施策につなげていきたい」。岸田文雄首相は2月上旬、22年度から女性の更年期症状が日常生活に与える影響について調査研究を実施すると国会で明らかにした。

岸田首相の答弁に先立ち、自民党は21年12月、人生100年時代戦略本部のなかに「女性の生涯の健康に関する小委員会」を設置した。委員長の高階恵美子衆院議員は「更年期世代の女性に対して社会的関心が向けられてこなかった」と説明する。今後、更年期を含め女性の健康を、生涯にわたり包括的に支援する法の整備を目指す。

英国でも昨秋、議会の更年期対策を充実させる法案審議により、対策本部を設立して職場に対策を働きかけることが決まるなど、政府が支援に踏み込む。

仕事の遂行能力に男女差はなくても、体の性差は存在する。更年期についての正しい知識の普及や適切な支援は、人生100年時代の女性の能力発揮に欠かせないピースのひとつだ。

社会全体で理解を


ここ数年、女性の生理に対する理解は進みつつある。一方で更年期についての理解はいまだに深まらず、悩む女性が多いのが現状だろう。だが、人口の多い団塊ジュニア(1971~74年生まれ)はすでに更年期に入っている。労働力調査(2021年平均)によると、45~54歳の働く女性は735万人にのぼり、就業率は8割近い。働く女性の4分の1を占めるこの世代の健康は女性やその家族だけではなく、職場にも影響する問題だ。

更年期に着目したアプリ「よりそる」は、不調をパートナーにLINEで伝えやすくする工夫で、企業の福利厚生サービスに採用される。よりそる代表の高本玲代さんは「身近な女性を労われる男性を増やすことで、社会全体で更年期の理解が進むことを目指す」と話す。社会の知識底上げを急ぎたい。
(ダイバーシティエディター 天野由輝子)
[日本経済新聞朝刊2022年5月2日付]

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