ホウレンソウに不信感 日系企業はアジアで人気低下
ニューススクール日系企業は多様性にも無理解

早稲田大学
パネリストの1人、日系メーカーのインド人マネジャーは、「日本企業のダイバーシティは言葉だけ。男女比や外国人の比率ばかりを気にして、ダイバーシティがなぜ必要なのか、そこから何が生み出されるのかを理解していない。インドでは某日系自動車メーカーのプレゼンスが高く、多くの優秀なインド人エンジニアたちの憧れでもあるが、入社後、日本的風土を目にするとすぐに他のインドや欧米系のメーカーに転職するケースが目立つ」と指摘する。インドの人気企業となったTCSは、全世界で61万人が勤務し、ITサービスでは米アクセンチュアやIBMと並ぶ規模の企業に成長した。
TCSは社員の国籍や性別、学歴は一切問わず、各層別の人材育成システムを取り入れ、スキル・実績に応じて年収が上がるジョブ型雇用を全面導入している。一方で多くの日本企業は今も年功序列型で人材の多様化にも後ろ向きだ。
同セミナーに参加したもう1人の中国人女性、シーメン・チーさんは、日本企業の採用面接で「なぜ中国の女性が日本で働くのか」と問われてショックだったという。人事担当者にとっては何気ない質問だろうが、多様性を是としているグローバル企業ではそもそもこのような問いかけは出てこない。
シーメンさんは日本の漫画やアニメなどの文化が好きで、日本語を学び、中国の高校を卒業して早稲田大学に進学した。日本の自動車大手で勤めた後、早稲田大学ビジネススクールで学び、その後「AQA3」というウェブ3関連のスタートアップ企業を共同創業者として立ち上げた。「やはり日本の文化が好きなので、この国で起業した。日本の大企業にはまだまだカイゼンの余地がある」と話す。
日本のインバウンド需要は回復基調にある。多くの外国人観光客は、「日本は食べ物が美味しく、独自の文化があり、治安もいい。さらに円安で物価も安くなっている」と評す。一方で「企業の閉鎖性、内向き志向はなかなか改善されていない」(大滝教授)。ダイバーシティや人材育成など人的資本経営のあり方が問われているが、真のグローバル企業に脱皮している日本企業はまだ少ないと言えそうだ。
(代慶達也)