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あなたはどこで頑張るのか

さて、ここで所得を増やす方法に立ち戻って考えてみましょう。

今いる場所でまじめに頑張れば所得は増える、あるいは少なくとも不安にならない程度の生活は保障される、という考え方に従う第1の方法があります。「目の前の仕事をまじめに頑張る」という方法です。

第2の方法は「あきらめてしまう≒なにもしない」ことです。所得を増やす方法なんてない。だからとにかく目の前の生活を楽しもうとすることもこのタイプに属するでしょう。

第3の方法は「自力で色々試してみる」ことです。スキルアップしたり、副業をしたり、起業を試みたりしながら、今よりも多くの報酬を得ようとすることです。

これらの方法のどれを実践しているか、ということを、現状への満足度をマトリクスで考えてみましょう。さて、あなたはどこに位置しているでしょうか?

この中で一番幸せなポジションは、右上の「目の前の仕事を頑張る&どちらかといえば満足」でしょう。成長著しい大企業で、成長と成果に応じて処遇が増えていくような状況です。そのような状況にある場合、愛社精神を高めながら、自分の専門性を伸ばしてゆけます。周囲の仲間たちと協力しながら、さらなる高みを目指せるでしょう。

現状に満足できているのなら、「特になにもしない」という選択肢も決して悪いものではありません。ただ、人は誰しも年をとるので、将来不安への備えを心掛けておけば、ですが。

一方でまずいのは、「どちらかといえば不満」なのに「目の前の仕事を頑張る」とか「特に何もしない」ことです。そのような状況に置かれているということは、会社自体もあまり成長を志向せず、従業員の所得を増やそうともしていない、あるいはできないようなことが想定されます。だから不満を感じていると思うのですが、そのような状況ではそもそも何かを変えなければ、会社は助けてはくれません。従業員に自立を求める会社の割合はどんどん増えているからです。

主体的キャリアは楽ではないけれど…

満足、不満足を問わず実践するとすれば「自力で色々試してみる」ことです。主体的にキャリアを形成すること、と言い換えてもよいでしょう。

ただ、それは決して楽なことではありません。

リクルートマネジメントソリューションズ(東京・品川)による「若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査」(機関誌RMS Message vol.64 特集1「キャリア自律の意味すること」調査報告[P.23~30]記載、https://www.recruit-ms.co.jp/research/journal/pdf/j202111/m64_all.pdf)によれば、25~44歳の方々の回答者傾向として、自律的・主体的なキャリア形成について、「したい」という意見(とてもそう思う、そう思う、ややそう思うの合計)が81.8%であるのに対し、そのことにストレスや息苦しさを感じるという意見が64.8%であったり、多くの人たちにとって「自律的・主体的なキャリア形成」は難しい、という意見が76.4%あったりするなど、そうしたいがなかなかできない、という実態が見えてきます。その結果として、会社に求められる「目の前の仕事を頑張る」とか「特に(キャリア形成について)何もしない」という選択肢を選んでしまうようになるのでしょう。

では皆さんはどうでしょう。

主体的なキャリア形成について、難しいからやらないのか、現状に不満だからやるのか、現状に満足しているけれどもやるのか。

ぜひ改めて考えてみてください。

 平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。

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