市長選落選、民間に転身 目の前のチャンスに執着する
NTTデータ執行役員・豊田麻子さん(折れないキャリア)
キャリアコラム民間企業の役員では異例の経歴だ。理系大学院出身の官僚としてデジタル化が急速に広まった1990~2000年代に霞が関で勤めた。42歳で広島市副市長に出向し地方行政へ。選挙に落ちて一度は無職になり、民間に再就職して9年目に執行役員になった。
「5年先にはどこでどんな仕事をしているんだろう」。技官として郵政省(現総務省)で働き始めた20代のころから想定外の経験を重ねてきた。「目の前の仕事に執着して一生懸命頑張る。謙虚な気持ちで、大いに挑戦する。すると自然と次の課題が見えてくる」と楽しそうに話す。
振り返ると、環境に後押しされてキャリアを歩んできた。縁もゆかりもない広島市に着任したのは、郵政省の先輩女性が先方に推薦してくれたから。「女性初の副市長」と注目されてもプレッシャーより感謝が強く、「市民の期待に応えたい」と国家公務員を辞めて市長選に出馬した。

とよだ・あさこ 1990年郵政省(現総務省)入省。2008年広島市副市長、12年NTTデータ入社。
次点で落選して失業し、45歳で再就職したのがNTTデータだった。情報通信行政に20年ほど携わった自負から「IT政策を具現化させます」と当時の副社長で後に社長になる岩本敏男氏に胸を張ると、「政策も大事だけどやっぱり売り上げだよ」とぴしゃりと返された。民間では数字がモノを言うと気付き、覚悟を決めた。
知識も人脈もない職場で、再び縁もゆかりもないミャンマーでの新規事業を任された。周囲がお膳立てしてくれた副市長時代とは打って変わり、ほぼ1人でゼロから資料を作り、関係先を飛び回り、深夜まで現地とファクスをする日々。数年越しに同国中央銀行へのシステム導入が実現し、民間企業で働く自信や社内での信頼関係が生まれた。