フジテレビでヒット連発した企画屋 40代で再修行
キャリアコラム企画の源泉は「人と話して壁打ち」「置き換えの発想」
しかし、せっかくの企画が突き返され、実現しても望んだ結果につながらないことが続けば、気持ちは萎える。そんな時、どうすればいいのか。高瀬氏は「一番いいのは人と話して壁打ちをすること」だという。
「僕もフジテレビ時代、若手の放送作家やディレクターの集いに参加し、互いに壁打ちし合っていました。自分1人だとすぐに行き詰まりますが、人と話していると何かを思い出したり、無関係だと思っていたことがつながったりします。『ゼロから1を創る』とよく言われますが、現実の世界で本当のゼロから1が生まれることはありません。でも人は新しさを求めます。僕がオススメするのは置き換えという手法。みんながよく知っているものから何か1つの要素を置き換えるだけで、新しい企画が生まれます」

若手時代はどんな企画を出してもボツだったという
「逃走中」も「置き換え」の発想から生まれた。サッカーの試合をテレビで見ていたある日、高瀬氏はふと画面のカウントダウンが気になった。大して面白い試合でなくても最後まで見てしまうのは、試合終了までの時間が表示されているからでは?と考えた。であれば、カウントダウンするものを、サッカー以外に置き換えてみてはどうか。そこで、みんなが知っている鬼ごっこをカウントダウンしながらするアイデアを思いついた。どうせやるなら渋谷の街で大規模に展開したら面白そう……。そこからどんどん構想が広がっていった。
「逃走中」はその後、高瀬氏のプロデュースでニンテンドー3DSのゲームになり、100万本を超えるヒットとなった。高瀬氏の手がける企画の最大の特徴は、メディアの枠を軽々と飛び越えて、マネタイズにつながっていく点だ。2人のプレーヤーが3ケタの数字を当て合うゲーム「ヌメロン」もしかり。こちらは最初からスマートフォンのアプリ化を見込んで、ゲーム内容からデザインして番組を制作。結果的にアプリが350万部超ダウンロードされるという結果につながった。
「ずっとサラリーマンで60歳」に危機感
メディアの枠をまたぐ発想はどこから生まれたのか。きっかけは営業2年目の研修だったという。米国4大ネットワークの担当者から話を聞く機会があり、テレビの将来に危機感を持った。当時はインターネットの脅威より多チャンネル化が議論されていたが、単に番組を作って流すだけではいずれ行き詰まると感じた。以来、「テレビの価値とは何か」と考え続け「たくさんの人に見てもらえるというリーチこそが最大の価値」だと気づいた。
そこで思考法が変わった。テレビ向けコンテンツを作る→当たればゲームやDVDなどに2次展開していく、という従来型の考え方とは真逆で、「ゲームが当たれば利益を生む→ゲームを流行らせるには、ルールや面白さを多くの人に知ってもらう必要がある→そのためにテレビのリーチを活用する」と考え、ヌメロンが生まれた。