フジテレビでヒット連発した企画屋 40代で再修行
キャリアコラム18年に独立したのも、テレビという枠にとどまっていたくなかったからだという。ただし「敏腕プロデューサーが意気揚々と独立した」というわけではなく、「このままじゃヤバいと焦り、修行するつもりで外へ出た」と打ち明ける。契機となったのは、ドラマ制作センターへの異動だった。自分としては、ネットゲームや漫画から火をつけてドラマにつなげるといった試みをしたかったが、全く相手にされず、暇になってしまったため、起業家やフリーランスで働く人々と積極的に会うようになった。
「これってサラリーマンの『あるある』ですが、八百屋さんのオヤジでも制作会社の社長でも、組織に頼らず自分の足で立っている人が、めちゃめちゃカッコよく見えたんです。僕は100歳まで生きるつもりなので、60歳以降も働かなくちゃいけない。今40歳で、そのあと20年ずっとサラリーマンだけやって60歳になったとしたら、自分の足で立ち続けてきた人たちにはとても太刀打ちできない。そう気づいて一気に見える景色が変わりました。自分に力をつけなきゃヤバいぞと」
年間500回会食「アイデアはもがきながら生まれる」
起業から4年。事業がようやく安定化し、今チャレンジしているのはユーチューブチャンネルのオリジナル企画「ADEL33」だ。プレーヤーとなるタレントたちが、ある異世界に放り込まれ進行するファンタジックショーで、いわば実写版のRPG(ロールプレイングゲーム)。「ここで食べていけるとは1ミリも思っていない」が、自分のやりたいクリエイティブを誰にも邪魔されずに試す場としてユーチューブを選んだという。

ユーチューブでオリジナル企画として、実写版のRPG「ADEL33」を始めた=ジェネレートワン提供
「テレビとの最大の違いはテレビがフロー型なのに対してユーチューブはストック型であること。ネットコンテンツ全般に言えることですが、ストックできるというのは非常に魅力的」と力を込める。見据えているのは、コンテンツファンド化だ。コンテンツファンド自体は以前からあるが、ユーチューブにストックしたコンテンツで、という点が新しいという。ユーチューブではコンテンツが魅力的であれば固定ファンがつき、チャンネル登録者数が増え、コミュニティができる。その中でコンテンツを蓄積し、ファンドを組成するイメージだという。
「こういうアイデアもいろんな人と話す中から生まれてきます。コロナ禍になる前までは年間500回くらい会食をしていて、昼、夜ダブルヘッダーなんてこともザラでした。僕は人と会うのは毎回、オーディションだと思っているんです。僕と会った時間が無駄ではなかったと思ってもらえるために、少しでも価値ある情報を提供するように努める。会食もそうだし、この取材だって面白いと思ってもらえたら、また来てくれるかもしれないじゃないですか」
周囲からは「バズる企画の法則を知っている人」と期待される。だが、高瀬氏に言わせれば、そんな法則はない。答えは誰も教えてくれないし、仮に教わっても、自分に合うかどうかわからない。派手に見える実績も、もがきながらつかんできた。「今だって、ずっともがき続けている」。それが本人の実感だ。
(ライター 石臥薫子)