変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

SAPジャパン 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見直文氏

SAPジャパン 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見直文氏

業種や業界の垣根が薄れ、技術革新のスピードが増し、新たなビジネスモデルが次々と生まれる中、企業の人材管理のあり方も転換点を迎えている。事業戦略の実現に向け、企業は最大の資本である人材をいかに確保し、育成し、最適に配置していけばいいのか。その注目すべきソリューションについて、SAPジャパン 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部の佐々見直文本部長が、「持続的なリスキリングを可能にする次世代のスキルベース人材管理基盤」と題し、日経リスキリングサミット2023で講演した。

求められるリスキリングの継続

ドイツに本社を構え、昨年設立50年を迎えたSAPは、ERP(企業資源計画)や人材管理、サプライチェーン管理などの業務管理ソリューションで知られる。日本においても、人事管理に関するソリューションを30年以上提供し、関連子会社を含め1800社以上が導入。特にリスキリングや人材育成のプロセスを管理するソリューションは、デファクトスタンダード(事実上の標準)となっている。

これらSAPの人材管理ソリューションが、今、注目されている。その状況についてSAPジャパンの佐々見直文氏は、「あらゆるビジネスでデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められ、経済産業省の試算では2030年にデジタル人材が79万人不足するといわれています。そうした売り手市場が続く中でも企業の人件費は圧縮されており、リスキリングに注目が集まっているのです」と解説する。

実際、日本でも大手企業を中心に危機感を持ってリスキリングが進められているが、佐々見氏は「そのスキルは、4年で3分の1が時代遅れになってしまうといわれています。しかし、それでも自社の将来のビジネスを支えるためには、企業には継続的にリスキリングに取り組むことが求められているのです」と指摘する。

では企業はどう対応すればいいのか。経営戦略に必要な人員計画を立案した上で、社外からの人材の採用や、派遣・委託による調達などが考えられるが、「最も重要なのは、既存社員が新しいビジネスモデルに貢献できるよう外部の知見を吸収する、中長期的なリスキリングを継続していくことです。企業には、将来のあるべき人材ポートフォリオに近づけるプロセスを、スキルをベースに回していくことが求められています」と佐々見氏。

AIや機械学習の活用が成否の鍵

しかし、リスキリングに向け、自社のスキル情報を可視化するツールを導入しても、すぐに情報が陳腐化して活用されなくなってしまうといった課題がある。また、スキル情報がきちんと管理されず、必要なスキルとのギャップ把握が曖昧になり、粒度の粗い人材ポートフォリオに基づく育成計画になってしまう課題もある。

さらに、リスキリングの機会提供が全社員に画一的で、研修偏重型のeラーニングだけが提供されるタレントマネジメントツールの導入で終わってしまうケースもある。しかも、これらが連携していないと、スキル情報の不整合や不活用という問題も発生する。このため、企業には二つのことが重要になると佐々見氏は強調する。「まずスキルカタログを最新の状態で構築し、維持していくこと。さらに従業員のスキルを最新の状態にアップデートすること。この二つを、AI(人工知能)や機械学習を駆使して解決していくことが求められています」(佐々見氏)

その具体例をSAPが提供するソリューション「SAP SuccessFactors」で見ると、機械学習を使い、外部のスキルデータを各社のニーズに沿って自動で取り込むことで、最新のスキルカタログが構築できることがわかる。「またスキルのアップデートに関しては、従業員が取り組んでいる目標や職務、プロジェクトなどをAIが理解し、新たなスキルが身に付いたときにタイムリーに教えてくれることで、スキル情報が継続して更新されます。このスキルカタログとスキル情報を突き合わせることで、企業として埋めるべきリスキリングの施策が見えてくるのです」(佐々見氏)

さらに、従業員がモチベーション高く取り組むには、一人ひとりのキャリアや働き方の志向などに沿って進めることが重要で、それにより、個人の成長意欲と事業のビジネスニーズが掛け合わされ、効率的なプロセスを回していけるという。「その上で、自社のスキルポートフォリオの分析を行い、3年後、5年後のビジネスに向けたスキル育成計画を立て、それに基づき進捗管理を行い、必要に応じて施策を行っていきます」(佐々見氏)

例えば、DX人材の育成を推進する企業であれば、SAP SuccessFactorsを活用すれば進捗の悪い部分の可視化や、現有人材数と目標とのギャップが把握できる。また佐々見氏は、「AIが従業員それぞれのニーズに合ったスキルアップの機会を、的確にレコメンドしたり、スキルを実践できる社内プロジェクトや社内異動の機会、専門家のメンタリングを受ける機会などを提案してくれたりします。スキル情報もAIがPush型で知らせ常に最新に保つことができます」と続ける。

「SAP SuccessFactors」で見える化された社内のリスキリング機会提供状況

「SAP SuccessFactors」で見える化された社内のリスキリング機会提供状況

効率的なスキル更新の継続を支援

企業が成長する上では、社内に知見がない領域の外部人材を採用し、新たなスキルを社内に根付かせていくことが有効だ。その際にはミスマッチのない人材の採用が求められるが、「ここでも、生成AIの機能を活用することで、魅力的で精度の高い募集広告を効率的に作成し、選抜のための適切な質問を提案することで、迅速な採用をサポートします」(佐々見氏)。

例えば、ある企業がESG(環境・社会・企業統治)領域のコンサルティング事業に乗り出すため、サステナブル(持続可能)調達のIT専門家を採用しようとした場合、求人票に概要レベルの職務定義を作成すると、AIが蓄積された他の職務定義情報や、数億件の関連情報を組み合わせて求める人物像を追加してくれる。加えて、必要な資格の追加や表現の修正、さらには面接時の質問項目の作成も支援してくれる。

SAPは、こうしたソリューションにより、今後も企業をサポートしていくという。佐々見氏は「私たちは、次世代のスキルベースの人材管理基盤として、一元化されたスキル情報を軸に、あらゆるプロセスを連携して回していきます。そして、そこで更新されたスキルがさらに最新化されてアップデートされる環境を自動化し、皆様が効率的にリスキリングを推進できるようサポートしていきます」と語る。

リスキリングの課題やソリューションについて貴重な講演を行った佐々見氏

リスキリングの課題やソリューションについて貴重な講演を行った佐々見氏

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック