変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

庭山氏 僕は今60歳で大企業における経営層世代なんですが、われわれが若手〜中堅だったころは、景気がよかったこともあって日本の大手企業は社費留学制度を頑張ったんです。優秀な社員を欧米のビジネススクールにこぞって社費留学させました。その人たちが今会社に多く残っていれば、こうはなっていないはずです。

MBAホルダーの扱いを間違えた日本企業

慣れない英語で毎晩徹夜で必死の思いでMBAを取得して、マーケティングをはじめとした経営を科学的に学んできた人材の扱い方を、日本の企業は全くわかっていませんでした。当時は「会社のお金で遊んで来たのだから、また雑巾掛けからだ」みたいな感じでした。例えば、MBAを取得した人が活躍できるような、子会社の社長や事業責任者などのポジションを用意しておかなかったのです。それでは嫌気がさして辞めますよね。

実際、僕の知っている範囲でも、外資系企業やコンサルティングファームにみんな転職してしまいました。日本企業の中枢にMBAホルダーが本当はもっといていいはずなのに、そうならなかったのは痛いです。大きな原因はここにあると思っています。

――ただ、あらためてリスキリングと言った場合、なかなかマーケティングを学ぼうとはなりませんよね。むしろ「プログラミングを勉強しなくちゃダメなのか」みたいな方向にいくと思うのですが。

庭山氏 仕事に直結するものでないと意味はないですし、そもそも経営層の仕事はもうける仕組みを作ることですよね。無駄な勉強をしている場合ではないです。経営層がマーケティングをしっかり学ぶことで、多くの日本企業は復活するはずなんです。

――例えば……。

庭山氏 以前、印刷業界の経営層の方々向けに講演会をしたことがあるんです。そのときに「皆さん、自分たちの仕事をどのように定義されていますか」と尋ねたのですが、「我々は負け組ですから」と言って全然元気がありませんでした。

マーケティングの基礎知識で現状脱却

ただ、考えればわかることですが、紙の印刷の仕事は減っているのは事実でしょうけど、紙とインクの世界に自分たちを限定する必要はないはずですよね。「情報をパブリッシュする仕事」と再定義すればよくて、そうすれば印刷会社からウェブ制作会社にシフトできたはずなんです。でも、皆さん口をそろえて「インターネットが出てきたとき、敵だと思った」と言うわけです。

「まずはマーケティングの基本書を読むこと」と庭山氏(撮影=桜井陽)

「まずはマーケティングの基本書を読むこと」と庭山氏(撮影=桜井陽)

今までのアセット、技術、顧客基盤を横に展開して新たなビジネスをつくっていくというのは、マーケティングのイロハのイですよ。マーケティングの世界で最も尊敬されている学者の1人、セオドア・レヴィットさんも言っていますが、自分の仕事を近視眼的に見てしまうと衰退するというのは真理です。でも、マーケティングの知識さえあれば、抜け出せると思いませんか。

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