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「主婦は用事をはしご」 経験踏まえイベント開催

愛媛銀行は20年、県内外の支店で働く女性行員らでプロジェクトチームを立ち上げた。社内副業として支店の利活用に向けたアイデアを持ち寄り、オンラインで会議を開く。

愛媛銀行は、女性行員のみで構成するチームが発案したキッチンカーイベントを開いた(同行提供)

愛媛銀行は、女性行員のみで構成するチームが発案したキッチンカーイベントを開いた(同行提供)

「銀行を利用する主婦は用事をはしごする」「隙間の時間にランチを買えたら便利」。会議では主婦の経験もふまえた意見が飛び交う。それらをもとに、支店の駐車場にキッチンカーを呼ぶイベントを始めた。週替わりで人気店を集め、地域住民らでにぎわう。

チームに参加する企画広報部の喜安規子主任は「金融業と関係ないイベントでも駐車場にきてもらうことで集客につながる」と話す。今後は駐車場でのコインランドリー事業にも乗り出す計画だ。制度運営に携わる経営管理部の田原隆史次長も「これからは、従来にない事業アイデアが必要」と評価する。

「ファンの心理や行動、知っている」 強み生かす

社内副業制度は個々人が持つ自由な発想や強みを生かす機会でもある。

KDDIの小野真凜さんは、社内副業制度でプロモーションの仕事を経験した

KDDIの小野真凜さんは、社内副業制度でプロモーションの仕事を経験した

「思い切って挑戦してみようと思った」。そう話すのはKDDIで入社6年目の小野真凜さん。料金収納の業務に携わりながら、20年10月から社内副業制度を利用してプロモーションの仕事もこなした。

勤務時間の2割を他部署の業務に割り当てることが可能で、社内サイトで他部署の募集を見て応募できる。小野さんが100件以上の副業求人から見つけたのは、同社が女性向けに始めた動画配信サービス「smash.」のキャンペーン案件。SNS(交流サイト)などでのキャンペーンの企画・運営を一任された。

「3人のチームで同僚は男性。女性としての視点を持てるのは強み」と話す。特に成果を上げたのは21年1~3月に実施したK-POPアイドルグループとのコラボだ。ファンをサービスに誘引するため、ツイッターでの発信を強化した。

ツイートでアイドルなどに関するクイズを投稿し、正解するとトークイベントに参加できる企画は数千の「いいね」がつくなど大きな反響を呼んだ。他にも部屋に飾れる大きめサイズの缶バッジを景品にするなど、独自のファン文化を理解した企画が好評を得た。

「自分もアイドルが好きなのでファンの心理や行動はよく知っている」と小野さん。女性向けのサービスだが、同僚や代理店の担当者らはほとんどが男性。顧客の視点に近い小野さんは欠かせない存在だ。副業経験を生かし、4月からはマーケティング統括本部で働く。

事業転換の契機にも


社内副業制度はビジネスモデル転換のきっかけとしても期待される。大日本印刷(DNP)は社内副業を活用し、実証店舗「外濠書店」を運営。仮想現実(VR)を使って本をおすすめするシステムなど、さまざまな実証実験を行う。

実験を手がけるのはコーポレートコミュニケーション本部の高橋祥子さん。本業は社内広報だが、元女性誌編集長のキャリアを生かし、社内副業で外濠書店に携わる。DNPの広報担当者は「印刷業界は『受注産業』のイメージが強いが、今後は能動的にアイデアを出さなければ生き残れない」と話す。

新規事業を生み出すには、多様な人が積極的に手を挙げられる環境づくりが必須だ。社内副業制度はその契機となりそうだ。
(下川真理恵)
[日本経済新聞朝刊2022年4月4日付]

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