変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

2016年には金融商品開発部の部長となり、第1子を出産。18年1月に当時最年少でマネージングディレクターに抜てきされた。が、その4カ月後、GENDAを共同創業する。

外資は年功序列ではないので、年次が来たら課長や部長になれるわけではありません。その意味で、33歳でマネージングディレクターになれた時は、達成感がありました。でもちょうどその1年くらい前に『ライフシフト』を読んで、人生100年時代のキャリアについて考え始めていました。もちろん1つの組織の中で出世する道もありですが、この本を読んで、私自身は40代、50代でだんだん失速していくキャリアは選びたくないと考えるようになりました。

30代までは私もいかに早く成長し、キャリアの階段を上がっていくかというスピード重視の考え方でした。でもあと50年近く働くと思うと、スピードよりも、いかにキャリアを「長く味わえるか」の方が重要でした。それで、いろいろな起業家やエンジェル投資家の方に自分でアポをとって話を聞きに行ったり、知人と起業のアイデアを練ったりして、次のステップを模索していました。その中で、GENDAの共同創業者の片岡尚さんと出会い、シード投資家からの出資を受けて起業に至りました。

創業からまもなく4年になります。コロナ禍でひやっとした時期もありましたが、自分自身、新たなステージに立って成長したと思います。自分と会社が「一心同体」という感覚が強まり、いいことも悪いことも含めてまさに今、「味わえている」と感じています。

20年からは社長業に加え、ファッション誌「VERY」の専属モデルという顔も加わった。

きっかけは19年。たまたま友だちと子供服の店で買い物をしていた時に、「VERY」編集部の方に声をかけられたのが最初でした。「ちょっと雑誌に出てみませんか」と誘われて、軽い気持ちで応じたのですが、私の私服に対する読者からの反響が大きかったそうで、専属モデルのオファーをいただきました。

「VERY」が私を誌面に出そうと考えてくださったのは、今の日本では「フルタイムの仕事をしながら家庭を持ち、幸せに暮らしている」という女性像が、まだあまり一般的ではないからだろうと思います。これは本当にステレオタイプな見方ですが、「仕事をたくさんしている人」=「ギスギスしていて、幸せではない」というイメージを持たれがちです。私のような生き方が必ずしも「正解」ではないかもしれませんが、仕事も家庭も大切にしながら、日々を幸せに生きている「1サンプル」として、読者の皆さんに見慣れた存在になっていけば、これからの女性の選択肢を広げることにつながるかもしれない。そう考えて、モデルの仕事には情熱を持って取り組んでいます。

社長とモデルを両方やるのは無謀なチャレンジのように思われるかもしれません。ただ私はチャレンジしても失うものは少ないと思っています。人がチャレンジを恐れるのは、やってみてできない時に人から批判され傷つくのが怖いからでしょう。でも人の評価は移ろいやすく、時とともに変わるものなので、私はそこに自分の判断基準を置かないようにしています。今の自分にとって何が幸せか、何が面白いかを自分で考え、自分のモノサシで生きる。それをモットーに、これからも会社をどんどん成長させ、モデルの仕事も頑張っていきたいと思っています。

(ライター 石臥薫子)

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