変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

本質的な価値創造が求められる時代

情意に基づく評価は組織の規律を求めていました。その後広まった能力や行動に基づく評価は、成功しやすいパターンの繰り返しを求めていました。また、業績数値などによる評価は、目標を達成するために全力を尽くすことを求めていました。

しかし今求められている基準は、「価値」そのものを生み出すことです。

価値とは、単純な業績数値を示すものではありません。むしろ、時には業績がいまだ不十分であったとしても、適切なプロセスを経て、再現性のある行動をとりながら、成長を実現することを価値とする場合もあります。

そのために、一人一人がビジネスにおいてどのような価値を生み出すべきかを深く考えることを求めるのが、最新の評価基準です。たとえば営業職であれば売り上げを増やすことによって、自社が提供するサービスを広め、顧客課題を解決することを価値として定義します。総務職であれば、各種規程を整備し、浸透させ、運用することで、継続的に活躍し続けられる組織風土を構築することを価値として定義します。

価値をしっかり定義するためには、一人一人が深く考えるだけでなく、同じ組織にいる者同士で議論することが大切です。また、価値を創造するために、日々のプロセスを振り返り、必要に応じ改善していくことが求められます。

それらの場面で重要なことが、コミュニケーションです。

それは相手のことを理解するために話す言葉に耳を傾けることであり、質問によって思考を深めるように促すことであり、問いかけに対して真摯に応えることです。

なぜ今の時代のビジネスにおける最新の評価基準が価値とコミュニケーションに基づくのか。多くの経営者と議論する中で私自身が考えている理由は、人々が求めるものが商品やサービスそのものだけでなくなっているからです。

たとえば食べ物に求めるものは、飢えを満たすことではなく、健康であったり、食事を通じての対話であったりします。

スマートフォンに求めるのは遠距離通話ではなく、つながりによる安心であったり、隙間時間を楽しみながらすごせることだったりします。

だからあらゆるビジネスでは、自分たちが提供する価値そのものの本質を意識して、事業を進めるようになりつつあります。

皆さんがさらに活躍するためには、自らの生み出す価値を理解し、コミュニケーションによって創造しつづけていくことが求められつつあるのです。

 平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。

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