変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

富山から東京の試作メーカーに通い詰め

実験や試作の器具も自分で手作りする張さん

実験や試作の器具も自分で手作りする張さん

「たまげましたね」。試作開発メーカーの安久工機(東京・大田)の田中宙さんは、21年7月に張さんと出会った。この会社はテレビドラマの「下町ロケット」の制作協力先で知られ、人工心臓など医療機器の開発も手掛けてきた。田中さんは「昨夏、お母さんから会社見学ができないかと電話がかかってきた。何となく人工心臓をやりたいではなく、彼なりの仮説を持っていた」と驚く。

張さんは「お金は大人になったら払うので、3Dプリンターで人工心臓の弁を試作してほしい」と田中さんに求めた。富山から東京まで5~6度通い、さらに同地区にあるプリンター開発会社のグーテンベルク(同)にまで足を運んだ。同時に東大や早稲田大学、金沢大学などの多くの研究者も訪ね歩き、人工心臓について教えてもらった。人工弁を試作するため、流体力学の数式も習得した。大学院の修士課程でもなかなか習わない難解な数式だが、「おかげで計算して仮説を組み立てられるようになった」という。

ペットボトル使い人工弁の模型実験

心臓の右心房と右心室の間には三尖弁があるが、その人工三尖弁はまだ実用化されていない。人にやさしい素材で逆流を起こさない人工弁を開発、自分の手で遠心ポンプもつくりたいと奔走。ペットボトルなど使って弁の模型実験を繰り返した。多くの実験や試作の器具は手作りだ。

ただ課題は山積していた。豚など動物を活用した「生体弁」を使った場合、カラダの拒否反応は少ないが、長持ちしづらい。一方で、「機械弁」を使えば、長持ちはするが、拒否反応が起こり、血栓もできやすくなる。シリコーンゴムや天然ゴムなど様々な材料の活用を考えたが、解を導き出せない。「人工心臓の研究はハードルが高い。動物実験も困難になっている」と張さんは頭を抱えた。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック