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大学の研究者も刺激、営業マンのような語り口調

孫さんらを前にオンラインでプレゼンする張さん

孫さんらを前にオンラインでプレゼンする張さん

実際、人工心臓の研究は、現在の補助人工心臓の段階からのアップデートは難しくなっている。張さんの指導にも当たった杏林大学の磯山隆教授は「厳しい時期だけど、張くんと出会って希望が持てるようになった」という。22年6月に突然、張さんからメールをもらい、対話が始まった。磯山教授は東大で人工心臓などを研究、現在は杏林大でコロナ禍で話題になった「エクモ」の技師養成に当たっている。

孫さんが張さんのプレゼンを聞いた時、もう一つ感心したことがあった。「安久工機様」などとまるで大人の営業マンのような丁寧語を連発して語っていたのだ。その理由を張さんは「大人に嫌われたくなかったから、今後も色々教えてもらい、研究に協力して欲しかった」と話す。実際に話してみると、まだあどけなさが残る中1の少年だ。

しかし、この1年余り、張さんと関わった研究者や技術者など大人たちは大きな刺激を受けたようだ。研究にひたむきで挑戦を止めないスーパー中学生は、大人にリスキリングを促しているのかもしれない。磯山教授も「まだ私も人工心臓をあきらめたわけではない」と語る。

人工弁の研究は途上、挑戦はあきらめず

22年末、心臓移植に関するニュースが話題になった。1歳の女児が米国で心臓移植するための費用が実に5億3千万円に上るという。補助人工心臓を付けた状態での渡航に必要なチャーター機と現地での医療費に円安が加わり、膨大な金額になる。今回は募金活動の末、目標金額に達したようだが、もちろん誰もが払える額ではない。現在のレベルの補助人工心臓は最終の解ではない。

孫財団の支援を受ければ、欧米のトップクラスの教育・研究機関にも留学することも可能だ。しかし、張さんは困惑した表情で「今は将来の目標が立てられない。この人工弁の研究の解がまだ見えないので」とつぶやく。彼の語っていることは、中学生ではなくて、大人の研究者のそれだった。たとえどんなに困難な道でも挑戦をあきらめる気はないという。

(代慶達也)

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