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インフレ対応ではなく人材獲得競争としての対応

ジョブ型雇用を徹底している会社では、そもそも生活給としての給与ではなく、労働市場概念をベースに給与水準を設定することが一般的です。中途で採用するならこのくらい払わないと来てくれないから、それだけ支払える給与制度にする、という理屈です。

ではインフレが生じた際に、これらの企業ではどのように対応するでしょう?

もし皆さんがジョブ型雇用の企業で働いていて、5%のインフレが生じたけれども、会社が給与水準を引き上げる気はない、と明言したら? おそらく優秀な人から転職を考えるのではないでしょうか。

たしかにインフレは会社の責任ではありません。けれども、他の会社がインフレを見越して今の給与水準よりも高い金額を提示してきたとしたら? それでなくとも今は優秀な人材にとっては売り手市場だといいます。だとしたら優秀な人材を求める企業側で、インフレに対応する形でより高い給与水準を提示する可能性は高まるでしょう。

結果として、離職防止と優秀者採用を目的として、ジョブ型雇用の会社でも給与水準の引き上げが広がると予想されます。

ジョブ型を見越した自分の人的資本形成が必須

そのような状況において、私たちビジネスパーソンがとるべき行動は、ジョブ型雇用を前提としたキャリアの準備です。インフレが来る状況で、これまで以上に、今いる会社だけでキャリアを積んでいく選択肢の価値は薄れていきます。

自分自身の専門性を確立し、今求められるホットな場所で活躍できる状況をつくる。

そのために、自分自身の知識や経験を、目には見えないけれども重要な、人的資本として蓄積し続けることが重要なのです。

厳しい環境の中で成功するためには、自分自身を成長させ続けることこそが求められているからです。

 平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。

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