35歳からの初めての転職 後悔防ぐ7つの鉄則<前編>
ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行
次世代リーダーの転職学転職というイベントは、人それぞれ、きっかけも違えば求めるものも違い、年齢や業界、職種によっても需給状態がまったく異なる個別性が高い複雑な性質をはらんでいます。特に就職して以来、1社で10年以上働いてきて初めて転職を考えるような人にとっては、不安だらけだと思います。今回は、人生における重要な選択のときに後悔をしないために、実際の転職者の事例をもとに"ありがちな落とし穴"と、その対策をお伝えしたいと思います。
(1)こんなことなら辞めなければよかった
大手金融機関の経営企画部門で働くTさん(39歳)は、3年前に転職しました。当時、会社の業績や、45歳以上を対象にした3度目の早期希望退職募集の開始を目の当たりにしたことで将来に不安を感じ、「自分の賞味期限が切れる前に、とりあえず転職市場での反応を見てみたい」と考えたことがきっかけでした。最初に転職サイトに登録して、スカウトメールを送ってきたいくつかの転職エージェントと面談するうちに、とんとん拍子に3社から内定を獲得し、思っていたよりも早いタイミングで転職をすることになってしまったそうです。転職先に選んだのは、これまでとはまったく畑違いの中堅のシステム開発会社の経営企画部門でした。
転職してみてわかったのは、任せられる業務範囲の違いや仕事の進め方の違いからくるストレスの大きさでした。小学生の育児をしながらの勤務と言うことは伝えていたにもかかわらず、自宅に持ち帰っての仕事量の多さや、トップダウンで突然振られる仕事にもへきえきとすることになってしまいました。
「こんなことなら前の会社を辞めなければよかった」。Tさんは今では深く後悔しています。
特に初めての転職では、このようなケースが後を絶ちません。転職活動をするには、まずは会社を辞めることの妥当性を自分なりにしっかり吟味して、少なくとも今の会社を退職することについての自分の意思を明確にする作業はとても重要です。

「こんなはずではなかった」と転職で後悔する前に……(写真はイメージ)=PIXTA
(2)あの内定、受諾しておけばよかった
大手総合商社の食品部門の関連会社で20年働いてきたWさん(43歳)は、勤務先の会社が外資系企業に売却されたことをきっかけに急激に経営方針が変わり、本社の海外移転を含むリストラのあおりを受けて転職しました。想定していなかった事態をきっかけに急に転職をせざるを得なくなったこともあり、転職エージェントに相談しつつ、とりあえず動きながら考えようというスタンスで転職活動をスタートしました。これまでやってきた経験が生かせる同業界を中心に応募をし始めたところ、最初の1カ月で同業の大手企業から内定を獲得。しかし、通知された条件は、前職での年収900万円に届かない850万円という提示額であったため、年収が下がるのは避けたいという気持ちから内定を辞退しました。
しかし、そこからの転職活動が思うように進まず、6カ月間の苦しい活動を経て、最終的にまったく異業種で、かつ自宅からも遠い、千葉県の中堅住宅メーカーの営業職として転職。売り上げに応じた歩合給があるものの固定給だけで見ると年収600万円と言う金額を受けるしかありませんでした。
「転職活動3ヵ月目くらいで、最初の内定は実はとても恵まれていた条件だと気づきましたが後の祭り。あの時、欲張らずに内定を受けておけばよかったと今でも悔やんでいます」とWさんは振り返ります。このように突然、転職活動をすることになると、業界や仕事内容、年収や残業の有無など、自分の中で転職先に求める条件の優先順位を決め切れないまま動き始めることになりがちです。限られた時間の中で、自分は何を重視して転職先を選ぶのか、こだわることと捨てることを明確に決めておくことで、機会損失を防ぐようにしたいところです。