求人数12倍の新しい営業職を解剖 5つの必須スキル
マネーフォワード 辻吏香さん
職種&スキルの図鑑本当のペインを見つけるための「問題解決」スキル
カスタマーサクセスは、お客さまにサービスを導入してもらった後に使い続けてもらう役割を担いますが、そのためには、お客さまが抱えている本質的な課題をしっかりと見極められなければなりません。これが①問題解決における最も重要な要素になります。
対話の中で、お客さまは日々の業務で感じている小さな問題について話しているけれども、実はもっと深いところに本質的な課題がある。だけどお客さま自身が、それを認識できていないというケースが案外多いのです。

顧客の要望を言葉通りに受け止めるのではなく、本質的な課題を探るのが良いカスタマーサクセスだという
例えば、私が関わっている経費精算業務を効率化するサービスで、「月ごとの駐車場代の経費明細を出力したい」とおっしゃったとします。カスタマーサクセスとしては、ただ明細出力の方法だけお伝えするのではなく、一歩踏み込んで「なぜ出力されたいのか」を探ります。
ヒアリングをしていくと、実はコインパーキングを運営しているA社に、料金の引き下げ交渉に行きたいけれども、交渉材料として「A社のコインパーキングをこんなに使っている」と示せるデータがないというペインが見えてくる。そうであれば、経費精算のタイミングで単に「駐車場代」とインプットするのではなく、使った駐車場はA社のものなのかB社なのかという情報を収集できるようにしましょうといった具体的な提案ができます。
また、経費精算だけではなく、コロナ禍でのリモートワークと情報セキュリティなど、他により大きな課題がありそうな場合はそこまで踏み込んで、必要に応じて当社内でより詳しい人間につなげることもあります。そこまでコミットできると本当のカスタマーサクセスにつながります。
そういう本質的な課題解決をするために必要なのが②アクティブリスニング(聞く力)と③共感のスキルです。アクティブリスニングは、お客さまに内省を促すような質問をするとか、同じ業界の事例を参考に、もしかしたらこんなペインを感じているのでは?と深掘りして聞き出す力。共感は、お客さまと同じ目線に立って課題を見つけ、その解決のために自分たちに何ができるかを考えられる力とも言えるでしょう。
精神的に大変なことも 助け合うために重要な「自己開示」
④チームワークは、単に仲良くするということではなく、チームの仲間と円滑に情報共有やコミュニケーションができる力のことです。カスタマーサクセスの現場は結構泥臭く、自分のせいではないことでお客さまからお叱りの言葉をいただくこともあるんですよね。
例えばSaaSはクラウド経由で提供するものであってカスタマイズ製品ではないので、機能アップデートが自動で発生します。すると中には「新機能が期待していたものと違った!」と感じられるお客さまもいらっしゃるわけです。そんな状況でお客さまと1対1で向き合うのは精神的に大変です。そこでチームワークが重要になってくるのです。メンバー同士で助け合える関係を築くためには、日ごろから自分の考えや失敗の経験などを素直に周りに伝えられる自己開示力も必要です。
⑤データ分析は、データに向き合うことに面白さを感じられる、少なくとも苦ではないというのが基本です。必ずしもSQL(データベースを操作するための言語)を書けるレベルである必要はありません。私のチームでも書けない人の方が多いです。大事なのは、自分たちのサービスをお客さまにより効果的に使っていただくためにはどんな情報が必要かを考え、その情報を得るためにはどのデータとデータを組み合わせるのが最適なのかを考える発想力です。最初はできなくても、興味があればそうした分析が得意な人に聞きながら学んでいけます。
私たちの経費精算システムの例で言えば、新規導入されたお客さまがいて「2週間後までにその会社の従業員に関する情報を最低8割は登録して頂く」という目標を立てたとします。次のステップでは、登録の進捗がわかるデータを検知できるようにし、もし8割に達していなければ、担当者のタスク管理システムに自動的に通知が届くようにする。そうすればすぐにお客さまにコンタクトを取って必要な手を打つことができます。こうしたプロセスを設計すること自体に面白みを感じられる人は、カスタマーサクセス向きだと言えるでしょう。