DXは転職のチャンス 3つの潮流つかむ人材が活躍
経営者JP社長 井上和幸
次世代リーダーの転職学
DXは仕事の流れを様変わりさせつつある(写真はイメージ) =PIXTA
DX(デジタルトランスフォーメーション)が盛り上がっていますが、転職を考える次世代リーダーにとっては、「CX(キャリアトランスフォーメーション、これまでとは異なる職種・業種への転換)」を図る絶好のチャンスともなっています。DXが進めば、必然的に新たな転職採用ニーズが生まれるからです。今起きている主な3つの潮流に注目して、CXをへて活躍できる人物像を考えてみます。
新型コロナウイルス禍は時代の進むスピードを5~10年早めたともいわれています。その影響が最も大きかったのは、デジタル化の分野です。実際にあらゆる業界において事業変革が猛ピッチで進められています。それは我々エグゼクティブサーチファームにおいても日々体感するところ。企業から依頼を受ける経営幹部や組織リーダーのポジションは、大なり小なりこの事業変革を推し進めることに関連したものであると考えて間違いありません。
顧客データ、事業データを生かせる人が活躍できる
まず一つ目の大きな潮流は「データ」です。
自社が持つ顧客データや事業活動に関する、様々なデータを戦略的に生かして、マーケティング力を強化したい、オペレーションの効率化・生産性アップを図りたい、事業戦略を組み立てたいというニーズが顕在化しています。こうしたニーズに伴って、転職市場で求められる人材にも変化がみられます。
データ関連の典型的な職種としてはデータサイエンティスト、データアナリスト関連が挙げられます。顧客データを分析し、戦略に落とし込むチーフ・データ・オフィサーやCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)軸のマーケティング職も引き合いの強い職種です。事業・業務フローに関するデータを分析して、課題を見付け、バリューチェーンに落とし込むSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)職も引く手あまたの職種といえます。
これらの職種ニーズに関連して、彼らの仕事を外部のベンダーとして支援するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)系スタートアップも幅広い領域で続々と誕生しつつあります。急成長を遂げて、新規株式公開(IPO)を果たしているベンチャーも増える傾向です。
こうした流れの中で、例えばマーケティング職、物流・SCM職に関して採用現場でどのような会話がされているかを紹介しましょう。
「マーケティングマネジャーとしてのご経験は豊富ですが、旧来型の広告宣伝とプロモーションをやってこられた方で、今回求めたい顧客データ戦略の部分での期待ができるかどうか、心配なのですよね」
「確かに現場の物流マネジメント経験は豊富なのですが、今求めたいのは、DX推進を軸としてSCM全体の刷新と改編をリードしていただける責任者なので、今回の方はあいにく要件に合致しません」
企業側の判断として、またその命を受けている我々の段階でも、上記のような理由で、従来型の経験が豊富な応募者を「条件に合わない」と判断せざるを得ないケースが増えているのです。
データに基づく判断を重んじるデータドリブン社会が到来し、幅広い産業・職種で、自分たちのビジネスに関連する諸データを取り扱えるスキルが必須となっています。関与の濃淡はあれど、これから求められる人材であるためには、自らが関わる職務に関連するデータをマネジメントできる(「どのようなデータを収集すべきか」「どのようにデータ収集するか」「集めたデータをどう分析・活用するか」「データ分析の結果を、どう現場に活用・反映していくか」)ようになることを、十分に意識して業務にあたることが重要です。
逆に、ここを強みとして転職活動に臨めれば、転職成功の確率はかなりアップするに違いありません。ぜひデータマネジメントを転職活動のテーマ、さらに転職後の活躍テーマに組み入れてみてください。