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防災に女性の声生かす取り組み進む

このような声を受け、各自治体で防災に女性の声を生かす取り組みが始まっている。高知市は男女比を考慮して職員を配置。防災対策部35人中10人を女性が占める。自主防災組織に関する業務を担う地域防災推進課の課長は女性だ。防災対策部の女性職員は「女性が発言しやすい雰囲気ができている」と話す。岡山市は女性職員の声を取り入れ、今年から女性に配慮した防災ハンドブックを作成。男女差別と捉えられかねない表現をなくした。

災害時に女性が働きやすいよう、子連れ出勤を模索する自治体も出てきている。香川県坂出市の有志の女性職員による防災チーム「さかいで131(ぼうさい)おとめ隊」は21年度、職員にアンケートを実施した。災害時の子連れ出勤制度について約7割が「活用したい」と答えたという。今後の避難所運営などに反映していく方針で、メンバーの一人、田中美統子さんは「職員が心置きなく業務できる体制をつくる材料になれば」と話す。

愛知県豊橋市は今年3月、災害対応にあたる職員の子どもを預かる体制を整えた。震度6弱以上の地震発生から3日間を目安に、首がすわっている乳児から小学3年生までの2~30人を市役所内で預かる想定だ。地元で託児所を運営するNPO法人と協力する。

防災危機管理課の石野喜崇さんは「以前、女性職員が子育てを理由に災害業務に従事できなかったことがあった」と理由を説明する。災害時を想定した訓練で託児所を利用した職員からは「安心して預けられる」との声が聞かれたという。

公益財団法人市民防災研究所の池上三喜子さんは「有事には細かな気づきが求められる。女性の視点は切り離すことができない」と指摘する。そのうえで「災害が増え、女性参画の意識が高まっているのは事実だが、まだまだだ。行政が頑張るだけではいけない」と市民への協力も呼びかけている。

個人の備えも必要


内閣府の調査では、防災担当部署の女性職員がゼロの自治体と10%以上の自治体を比較したところ、女性職員ゼロの自治体では「乳児用紙おむつ」や「哺乳瓶」などの乳幼児用品や「女性用の下着」「生理用品」の備蓄が進んでいない傾向も明らかになった。
全ての自治体がすぐに防災担当の女性職員を置けるわけではない。個人の日ごろからの備えも求められている、と改めて感じた。
(浜野琴星)
[日本経済新聞朝刊2022年9月5日付]

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