変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

平井さんはここ10年近く、外資系IT企業で営業やインサイドセールスの経験を積んできたが、キャリアのスタートは高校卒業後にアルバイトで入った小さなイベント運営会社だった。正社員にはなったものの、26歳の時「大卒資格もない、何のスキルもないままでは将来がない」と立ち止まり、そこからリスキル人生が始まった。

英語だけできても意味がない 掛け合わせるスキルを磨け

「パッと浮かんだのは、営業と英語でした。この二つさえあれば、とりあえずどこでも食っていけるはずだと。だったらワーキングホリデーでオーストラリアに行こうと思って、その資金準備も兼ねて派遣で営業の仕事を探しました」

最初に入ったのは光通信のグループ会社。個人向けに通信回線などを売る電話を1日数百件かけた。次に入った中国の電子商取引(EC)大手のアリババのグループ会社では、海外進出をもくろむ中小企業に「進出の足がかりにしませんか」とサイトへの出店を促す法人営業を担当。単にモノやサービスを売るのではなく、相手のことを調べ相手の文脈に沿ってビジネスを提案するBtoB営業の面白さに目覚めた。夢中になって深夜まで働いたが、成績は振るわず契約終了の憂き目にあう。悔しくて今度はBtoBマーケティングに特化した外資系のマーケットワン・ジャパン(東京・中央)に飛び込んだ。

そこでは単純なアポ数ではなく、質を重視。相手先企業で決定権を持つ部長や役員レベルのアポを取ることを約束し、取れなかった場合は理由や次のチャンスを狙うための詳細なコンタクト情報などをまとめたリポートを提供していた。顧客にはマイクロソフトやIBM、日本の名だたるIT企業がずらり並んでいた。

「僕が前職でできなかったことを本業としてやっていて、しかも外資系なので英語も学べる。これはワーホリよりいいと思って、最初は派遣でしたが正社員になりました。というのも、マーケットワンの先輩から指摘されたんです。『お前、流ちょうな英語でバナナが好きですって言ってみろよ。意味ないだろ。そういうのをspeakable monkey (しゃべれるサル)って言うんだよ』って。英語だけペラペラになっても、そもそものビジネススキルがないと何の意味もないと気づいたんです」

インプットしたら必ずアウトプットを繰り返し

マーケットワンでは顧客であるIT企業の製品・サービスを売り込むために、新しいテクノロジーについて貪欲に学んだ。その頃からずっと心掛けているのが、情報をインプットしたら必ず本当に理解できるまで自分の言葉でかみ砕いた上で、アウトプットすることだ。

「例えば今ならNFT(非代替性トークン)とかウェブ3(次世代型インターネット)が話題になっていますよね。それをバーでたまたま隣に座った人とか、趣味のバンドでドラムを担当している60歳のオジサンや自分の母親でもわかるように説明するんです。そうすると、自分自身が何がわかって何がわかってないかが整理できる。さらに相手のレベルや文脈に合わせて話ができるようになる」

仕事で結果を出せるようになると、ソフトウエア大手のオラクルにいた先輩から声がかかった。同社に転職し担当したインサイドセールスはここ数年、日本でも注目されている新しい職種。平井さんいわく「マーケットワンで顧客向けにやっていたことを社内向けにやる仕事」だ。目的は、より多くのアポを取ることではなく、商談につながる質の高いアポを取り、社内の営業につなぐこと。平井さんはそこで、顧客にまつわるさまざまなデータを読み解くスキルを磨き、誰がキーパーソンで、いつ、どんなテーマで、どのように話を持ち掛ければいいのかを見極め、実行する経験を重ねて、社内でトップの実績を上げるまでになった。

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