情緒で語るな人的資本経営 社員の学びは会社の責任で
リスキリングプレーヤーズ
SP総研の民岡良氏
日本でも関心が高まる「人的資本経営」は、人材をコストではなく、競争力の源泉と位置付け、人材に投資することでその価値を高め、企業全体の価値向上につなげようとする考え方だ。その最初のステップとなるのが、個々の従業員の「スキルの可視化」だが、そこで戸惑う日本企業は少なくない。従来のメンバーシップ型の組織では、職務がスキルベースで定義されておらず、従業員の評価・育成においてもスキルが意識されることは少なかったからだ。
2021年創業のSP総研は、そうした日本企業向けにスキルと職務(ジョブ)の可視化サービスを展開する。同社代表取締役で、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム理事も務める民岡良氏へのインタビュー前編「Youの仕事は縁の下の力持ち? スキル言えない日本人」では、独自に編み出した現場主導、ボトムアップ型のスキル可視化の手法について聞いた。<後編>では、具体的な事例や、人的資本経営とスキル可視化との関係について聞く。
半年かけてジョブ定義とスキル可視化に取り組む
――これまで、SP総研のスキル可視化はどういう会社で活用されていますか。
創業から2年あまりで約50社の支援を行ってきました。代表的な例を挙げると、パナソニックホールディングスの子会社のパナソニックインダストリーです。同社では22年10月から部課長以上の全ポジションを公募するという思い切ったことを始めていて、その準備として役職ごとに職務と任務、必要なスキルを定義することになりました。当社で半年かけて約700人にワークショップを行い、ジョブ定義とスキルの可視化を行いました。
ワークショップは1グループにつき5時間かけることを基本とし、1日目に2時間、2日目は1時間、3日目に2時間などと分けて実施しています。どう分けるかはクライアントの要望に合わせます。ただ、どうしても5時間は確保できないと言われれば、短縮して3時間から4時間などにアレンジすることも可能です。
数百人、時には数千人単位でそれをやるのは大変ですが、当社は豊富なキャリアコンサルタントのネットワークを持っているので、その方々に協力してもらい、グループ単位・オンラインで実施することで効率化は十分可能です。5時間は長いと思われるかもしれませんが、スキルとジョブの可視化がリスキリング、ひいては人的資本経営のベースになるので、時間をかける意味は十分あると考えています。