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証券会社の窓口の人を質問攻め

外部との打ち合わせがある時はスーツだが、普段は上下黒のジャージで出勤している。社員によれば「炭水化物を避け、魚肉ソーセージばかり食べている」らしい

外部との打ち合わせがある時はスーツだが、普段は上下黒のジャージで出勤している。社員によれば「炭水化物を避け、魚肉ソーセージばかり食べている」らしい

「すぐ店に入って、窓口の人に『僕が預けているのは郵便局ですが、あのポスターのものはどこが違うんですか』と質問しました。すると『ほとんど同じだよ』という答えで、ますます利率の違いはどこから生まれるのかが気になりました、それで、なぜ?なぜ?と質問攻めにしてしまったんです。今思えばその方も、突然訪ねてきた子どもによく真面目に答えてくださったなと感心しますが、どうやら証券会社に預けた方がリスクは同程度だけれどもお小遣いは増えそうだとわかった。そこで家の台所の引き出しから親の印鑑をこっそり拝借して、証券口座の申し込みに行きました。今では絶対ありえないことですが、当時はそれで口座が開けたので、なけなしのお年玉を全額移し替えました」

数字に引かれる少年は、父が毎日眺めている新聞の株式欄も気になった。子どもの目には数字の羅列にしか見えないそれを、父はどうやって「読んで」いるのか。なぞを解くべく書店に行き、マンガで書かれた株式投資の入門書を購入。中学生になると株式投資ゲームのソフトを買い込み、なぜその株を買うのか、売るのか、なぜそのタイミングなのかという問いをひたすら追求。最終的には実際の株式投資をしている父にも売買の意見をするまでになった。

杉原氏はのちに、大手機関投資家による調査が行き届かない中小型株を徹底的に調べ上げて投資機会を発掘し、高いリターンを狙うファンドマネジャーとなったが、その原点とも言えるのが、この「なぜなぜ」思考。今も投資や事業について話し合う会議の席で「なぜ」を連発するため、社員から「なぜは5回までに留めてほしい」と苦言を呈されるほどだ。

「例えば、好業績の要因としては売り上げが伸びているとかマーケティングが成功したとかいろいろありますが、一つひとつについて『なぜ?』を繰り返していく。そうすることで、単なるまぐれ当たりなのか、それとも再現性のある本質的な競争力があるのかが見えてくるのです。まあ、これは後付けですけど、小さい頃から文字や数字が好きだったのも、それらを使って記述されている『世界』というものの構造を知りたい、真理を追究したいという気持ちが強かったのかもしれません」

高校時代、教科書を「返品」

誰かの言うことをうのみにするのでなく、自分の頭で考え確かめたい――。その強烈な欲求はある種の反骨精神を育み、名門として知られる神戸高校では、前代未聞の「騒動」を引き起こした。新学期に教科書が配られた際、暗記・知識偏重型の科目が好きではなかったこともあり、「自分には必要ない」と考えたいくつかの教科書を、販売会社に即「返品」に行った。当然大目玉を食らったが、進学校の懐の深さゆえか、再び買わされることはなかったという。

高2の文化祭の模擬店では、これまた前代未聞の「お酒を使ったメニュー」を考案した。杉原氏は今も新たな挑戦をする際、「なぜ今まで誰もやらなかったのか」とその理由を突き詰めるが、この時も「飲用はダメでもワインを使った本格的なシチューなら、やってはいけない理由はない」と考えた。神戸高校の正門に続く急勾配の坂、通称「地獄坂」にちなみ、店名は「フランス厨房・地獄坂」としゃれ込んだ。ワインで2日間煮込んだシチューは飛ぶように売れ、「つけ合わせのフランスパンが足りず、だんだん薄く切らざるを得なくなって、最後は数ミリの薄さになった」。一方できっちりと原価管理をし、高校の模擬店では珍しく黒字を確保。「あれがベンチャービジネスの面白さに目覚めた原点だったかもしれない」と振り返る。

大学は「一人暮らしがしたい」という理由で、多くの同級生が目指す京都大ではなく東京大を受験。どちらかというと理系科目が得意だったが、選んだのは文3だった。心理学的なテーマを情報処理という理系的アプローチで解明する「認知心理学」が学べると知ったからだ。当時を知る知人は、学生時代の杉原氏の印象についてこう語る。

「いつも図書館から借りた本を10冊も20冊も抱えて走っていましたね。『どうしてそんなに急いでるの』と聞くと、『実験用のネズミに餌をやりに行かなきゃ』って。実験イコール理系というイメージだったので、まさか文学部にいるとは思いませんでした」

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