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もともとマッチングアプリ「ペアーズ」を運営するエウレカ(東京・港)でデザイナーをしていた。独立後、前の職場に「救われていた」と気がついたという。

丸1日寝込むほど生理の症状が重かった酒匂さんは、毎月、生理休暇を取得していた。前もって生理休暇の予定日を決め、仕事を調整。1日しっかりと休養することで、翌日以降に持ち越さずに働くことができたという。「どこの職場も生理に理解があるものだと思っていた」と振り返る。

「ペアケア」はパートナーと生理周期やその日の体調を共有できる

「ペアケア」はパートナーと生理周期やその日の体調を共有できる

だが友人らに話を聞くと、生理休暇が有名無実化していたり、上司らの理解がなかったりと、多くの女性は生理のつらさを我慢しながら働いていた。一つの要因として、男性が女性の体のことを知らず、女性もそれで仕方がないと思っていることに気がついた。「女性だけが生理やPMSを理解すればいいという世の中の文化を変えたい」。そう考えペアケアの開発に乗り出した。

ペアケアは男性も利用できるのが特徴だ。現在、約28万ユーザーのうち男性が2割を占める。パートナーの生理周期や体調を把握するために、カップルで使う人が多い。

個人のユーザー数を増やした上で、将来的に企業の福利厚生としてサービス化も検討する。「家庭でも会社でも生理のことを話題にしやすくなれば、女性もより働きやすい職場になる」と酒匂さん。生理というタブーを当たり前に変えたい、という思いを抱いている。

職場は「生理の不調に理解ない」55%


企業が女性の体の悩みに向き合えば、女性はもっと活躍できる――。日経BP総合研究所は8月、生理の不快な症状がある18~49歳の働く女性1956人を調査した。
不快な症状の影響について尋ねたところ「仕事や勉強の効率が落ちる」と答えた人が75%にのぼった。「ミスが増える」(28%)、「つらくて休む」(24%)という声も次いで多かった。
症状があるときの仕事の出来について点数評価してもらうと、普段(10点満点)と比べ平均約6点にまで落ち込むという結果が出た。20代以下と30代ではそれぞれ3割が5点以下と回答。若年層ほど生産性やモチベーションが大きく低下することがわかった。

勤務先に求めるケアについては「婦人科受診費用の補助」(33%)、「低用量ピルの服薬支援」(30%)、「生理について理解を深める全社員対象の研修」(30%)の順に多かった。職場は生理関連の不調に対して理解があるかとの問いに対しては「そう思わない」と考える人は55%で「そう思う」を15ポイント上回った。

職場は理解がある、と答えた人の8割は「今の会社・職場が好きだ」と回答。一方で、職場に理解がない、と答えた人では6割にとどまったという。日経BP総合研究所の黒住紗織上席研究員は「昨今、フェムテックなど生理にまつわる言葉を耳にする機会が増えた。だが多くの女性が、生理の不調を周囲に理解されないまま過ごしている状況は変わっていない」と指摘。「職場全体で理解を深めることが必要だ」と話している。
(丸山景子)
[日本経済新聞朝刊2021年12月6日付]

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