変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

非財務価値にもっと注目する

近年、グリーンボンドやソーシャル・インパクト・ボンドなど社会的意義を考慮した融資システムやSDGsを指標にした投資が増えています。しかし、投融資した後、その企業がどのように世間や市場から評価されているか社会的意義として一貫して測っていく指標は、日本ではまだまだ未発達です。非財務的価値にも目を向け一つの価値尺度を作り、経年の成長を見る。これからの企業評価には、必要な指標ではないでしょうか。

上場企業では、ESGに関連する開示は待ったなしです。それ以外の企業でも、ESGへの対応は、不可避だと思います。ぜひ、企業成長の軸として非財務価値の可視化をもっと取り組まれることをお勧めします。ESGなどは、世の中の流れだから仕方なくやっているという企業もあるかと思います。しかし、消費者やステークホルダーは見ています。これを機に、ESGなどに積極的に対応し、企業価値を高めていく戦略を考えてみてはいかがでしょうか。自社にあったESGのテーマを調査・分析し、メッセージを打ち出していく。定期的にメッセージを出しながら、進捗をわかりやすい尺度で開示していく。莫大なコストをかけなくても、できることはたくさんあるはずです。ESGに関連する研究でも、ESGへの本気度を消費者たちが評価している結果も出ています。

このような側面において、経済学が有用だと気づいていない方も多いかもしれません。しかし、このように様々な場面で、経済学の活用方法は多数あるのです。特に、根拠づくりや指標化については、日本経済ではまだまだ成果が少ない。他社より一歩先を進む方法の一つとして、学知を実装することを検討するのはとても良い方法だと思います。

経済学の真の有用性は、導入してこそ気づきうる

3回目から今回までの5回は、様々な場面での経済学のビジネス実装について解説してきました。現時点では、まだまだ活用の仕方について日本での成功事例は少ないと感じます。しかし、様々な研究の中で見えてきた結果は、多くの企業で活用できるはずです。実際に、各企業で経済学を実装すると、多くの企業はその有用性に気づきます。そうした活用事例は、様々な形で発表されています。

実際、当社に声をかけてくださる方の多くは、発表された活用事例が自社課題と近いと感じたことがきっかけだといいます。

「経済学のビジネス活用」と言われて今はぴんと来なくても、実際に触れてみることで得られる気づきは必ずあります。実際、当社を訪れた担当者が「これは自社のビジネスに使える」とわかると、そこからの動きはとてもはやい。ということは、企業は学知をどのように活用したらよいか、そして活用したらどのような結果が導き出されるかわかっていないだけといえるのではないでしょうか。

この点は、経済学者側にも言えます。自分の研究が、どのようなビジネスに活用できるかわかっていない場合も多いのが現状です。

これからの企業成長のために、ビジネスパーソンは少し経済学に触れてみてはいかがでしょうか。

たとえ経済学でいきなり収益が改善しなかったとしても、ビジネスの方向性は示してくれます。新しいことにチャレンジする瞬間は、コストや時間はいつも以上にかかって本当に改善するのかと疑問に持つ方もいるでしょう。利益に貪欲な欧米企業が示しているように、学知によって長期的に収益増加しますし、だからこそ欧米の各企業が活用しているのです。

昨年来、海外で活躍してきた優秀な若手経済学者が日本に続々と戻ってきています。彼らは、欧米での経済学がビジネスに貢献してきた現場をその目で見てきた、いわばビジネス実装の先駆者です。ぜひ、この機会に経済学の実装に挑戦してみてはいかがでしょうか。と言っても、まず何をしたらよいのか。次回、実装に向けて考えていきたいと思います。

今井誠
エコノミクスデザイン代表取締役・共同創業者。1998年関西学院大学商学部卒業。金融機関を経てアイディーユー(現 日本アセットマーケティング)にて不動産オークションに黎明期から従事。その後、不動産ファンドを経て独立。2018年ディアブル代表取締役、デューデリ&ディール取締役に就任し、不動産オークションでの経済学実装に取り組む。さらなる経済学のビジネス実装に挑むべく、エコノミクスデザインを創業。

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