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NIKKEIリスキリングの連載「職種&スキルの図鑑」。今回は、最近耳にする機会が増えた「プロダクトマネジャー」について、前編と後編に分けて取り上げる。解説してくれるのは、米マイクロソフト傘下でビジネスSNSのLinkedIn(リンクトイン)米国本社でプロダクトマネージャーとして活躍する曽根原春樹氏。プロダクトマネジメントに関する著書や講座も世に出してきた同氏が、実際のプロダクトマネジャーの仕事内容、必要なスキルやマインドセットについて語る。

前編ではプロダクトマネジャーが注目されてきた背景とその役割、評価されるPdMとはどんな人か、デジタルプロダクトの本場であるシリコンバレーで働く実務者ならではの視点で話してもらった。後編では、プロダクトマネジャーに必要なスキルと身に付け方について解説する。

PdMに必要なスキルセット

プロダクトマネジャーに必要なスキルセットを、プロダクトづくりのプロセスに沿って整理すると以下のようになります。

前編で説明したように、①ユーザーの考えや行動を理解することが基本です。そのためにはマーケティング市場調査ユーザーの深掘りのスキルが必要です。そこから、プロダクトのビジョンを描くわけですが、それが②のビジョン策定事業戦略立案にあたります。どんな世界を作ればユーザーが喜んでくれるか、ビジネスとして成り立つかを考えるわけです。

続いて、③ユーザーが抱える問題を発見・特定していくために、ビジネス課題特定仮説思考のスキルが必要です。どんな問題を解決していけば、もしくは、ユーザーにどんな行動変容が起こってくればビジョンにたどり着くのか見えてきたところで、④のユーザー体験の設計に入っていく。ここで、ビジョンからもっと具体的なUX設計UIデザインに落とし込んでいくのです。

最後の⑤はつくる・検証するフェーズで、エンジニアやデザイナーと協業して実際にテクノロジーを使ってプロダクトを開発していきます。そこではエンジニアと会話できるための基礎的なテクノロジー知識ウェブ開発はもちろん、検証を素早く進めるためのアジャイル開発が重要です。

そして、このプロダクトマネジメントプロセス全体を推進するために必要になるのが、ビジネスコミュニケーションリーダーシップチームマネジメントの力です。

NOと言えるリーダーシップ

ビジネスコミュニケーションは様々な場面で必要になります。例えばUX設計ではデザイナーにお任せ、とはならなくて、PdM自身がユーザーとちゃんと話してどういう体験に落とし込んでいくか、ユーザーのモチベーション分析などや定量分析から仮説を発想し、なぜそれをやるか、そのビジネス的な背景を丁寧に議論しなきゃいけない。関連して法規制はどうなってるか、認知を広げていくためにどんなマーケティング施策が一番効果的かなど、色々な観点でステークホルダーと議論する必要があります。

チームマネジメントが特に重要になるのが「つくる」フェーズ。作ると決めたことを計画に落としアジャイルソフトウエア開発のサイクルを回して実行していく議論のなかで、エンジニアやデザイナーと話すことになります。そこではやはりウェブ開発やテクノロジーの理解が必要になってきます。

その際、「この作業範囲でやろうとするとリリースがこれだけ遅れちゃうんです。どうしよう」みたいな議論がでてくるんですよね。こういうときにPdMがリーダーシップをとって、「じゃあこのユーザー体験はこういう風に分割して、最初のリリースではここまでやろう。その場合のリスクはこう対処しよう」みたいなことを決めるんです。それをちゃんと他のステークホルダーにも伝えてわかってもらうということも含めて、リーダーシップです。

これらは一見、営業などの職種で必要になるスキルですが、ここでは少し性質が異なります。

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