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ある程度の「勉強」が必要な時代

「相手が不快になるような言葉遣いとは知らなかった」というパターンに関しては、効果的な対処法がある。「知らなかった」のだから、知ればよいわけだ。要するに、学べばよい。好ましくない「不快用語・語法」をあらかじめ頭に入れておけば、自分で危機を避けられる。

こういう話をすると、「おしゃべりのために勉強しろというのか」とへそを曲げる人がいるかもしれない。ただ、お言葉を返すように言ってよければ、「勉強したほうがよい」となる。不用意な発言で恨みを買えば、やがては自分に返ってくる。痛い目をみるのは自分だ。周囲と良好な人間関係を保っていきたいのであれば、最低限の勉強が手っ取り早い。

「もう何十年も日本語を使ってきたんだ。今さら何を教わることがある」というのも、代表的な勘違いだ。日本人だから日本語が達者なんて理屈は通らない。他人を傷つけてしまう「不得手な日本語使い」はざらにいる。

40歳でも50歳でも、学び始めるのに遅いことはない。日本語のありようが時代につれて変わっているのだから、適切なアップデートは欠かせない。日本史だって「大化の改新」が「乙巳の変」へと、教科書の記述が変わっている。最初の貨幣は「和同開珎」ではなく「富本銭」だそうだ。生活に根差した日本語表現はもっと変化していておかしくない。

「言い換え」「語彙(い)力」などの検索ワードでヒットする、言葉遣いの指南書を読むのは、ベーシックな知識を養うのに役立つ。「不快」「言葉遣い」などの検索ワードを組み合わせれば、参考事例を挙げたホームページも見付かるだろう。

NGワードを封印するだけでは不十分だ。基本のマインドを理解する必要がある。自分のほうが「上、正しい」と思い込む態度は、いさかいの種になりやすい。断定的な物言いや説教調の語り口になりがちだ。相手の立場を思いやり、言い分に耳を傾ける姿勢が穏やかな対話に導く。

相手を無力な弱者だと決めつける心理は高圧的な態度につながり、恨みの火種となる。しかし、今は各種ハラスメントを禁じる法律があるし、告発に使える手段もある。恨みを買えば、相応の報いを受ける可能性は低くない。「泣き寝入り」を期待するのは危うい勘違いだ。

不満や反発が広がれば、不作法者のポジションは下がっていく。職場で恨みを買わない言葉遣いはビジネスパーソンにとって生き残っていくうえで必須の心得といえる。まずは「ソフトなトーンで、前向きな言葉を選び、朗らかに話す」という3点を心がけてみよう。それだけでも話し方の表情はぐっとやさしくなるはずだ。

梶原しげる
 1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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