スシロー、原価率50% 業界首位を支える薄利多売
回転ずし「スシロー」(上)
ヒットの原点揚げ物とあぶり物でメニューに幅
スシローの成長期を知る堀江社長にとって、印象的な出来事がある。1つはフライヤー(油揚げ機)を使う揚げ物メニュー、もう1つはガスバーナーを使うあぶりのメニューが登場したことだ。この2つの設備が導入されたのを機にメニューの幅が格段に広がった。商品開発の転機にもなったという。
「それまでのスシローは火事のリスクを避けるために油と火を使う料理は作らなかった。実際、『やらないほうがいい』という意見が大半だったので、揚げ物とあぶり物の登場は画期的なことだった」と、堀江社長は振り返る。

フライヤー設備の導入で実現した「エビ天にぎり」
フライヤーを使った揚げ物の第1号はエビ天にぎり。現在は殻をむいた状態のエビが店舗に届くが、始めた当初は1日500尾ものエビを店内で下処理していた。手間をかけただけ味は抜群だったが、「手がボロボロになる」という訴えをスタッフから受け、それ以降、一部の作業は外注して効率的なオペレーションに変えていった。
一方のあぶりすしは現場から生まれたメニューだ。一部店舗の限定商品だったが、人気を受けて全店で導入した。「すし店で出される温かい料理といえば、うどんか茶わん蒸しぐらいしかなかった時代に、温かくておいしいすしを食べられるとあって、揚げ物もあぶりも評判は上々だった」(堀江社長)。
実は、フライヤーの導入を提案したのは、当時、スシローの筆頭株主となっていたファンド会社のユニゾン・キャピタルだ。敵対的買収話が浮上した折、ホワイトナイト(友好的なスポンサー)としてスシローの経営に参画。一時は意見が衝突したこともあったが、ユニゾンの参画は、かたくなだった当時の経営陣の意識を変えるうえでプラスに働いたようだ。
こうしてスシローは、「安くてうまいすしを出す」という原点を守りながら、激変する市場にも対応できる外食チェーンへと発展していった。後編ではネタの調達力やスシロー流の加工方法などから、トップランナーの強みに迫る。
(ライター 橋長初代)