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2011年に渡米し、教育政策の設計やその効果の予測や評価をテーマとする論文でPhDを取得。学術論文の発表と並行して、ニューヨーク市やシカゴ市、南アフリカの医療NGOなどと協力し、教育や医療の政策作りにも関わってきた。今後は日本の教育現場の制度づくりにも関わりたいと意欲を燃やす。取材中も「余談だが」としつつ、日本の教育について「3層構造にすべきだ」との持論を語った。

成田氏によれば、教育の果たすべき機能は大きく分けて2つある。1つ目は生活や家庭環境に困難を抱えている子どもをすくい上げる機能だ。経済的な困窮や複雑な家庭環境にある子どもたちは、知識や思考力をうんぬんする以前に、新しいことを身につけ前に進んでいくモチベーションを作り出すこと自体が難しい。

「僕自身は小さい頃まさにそういう状況にあり、たまたま学校の外のコミュニティーを見つけたおかげで生き延びることができました。そういう子たちが前を向いて一歩踏み出せるようになるためには、科目を教える授業などとは別にもうすこし全体観を持った先生や地域の人や社会セクターの力が必要です」

日本の教育も3層構造に

もう一つの機能は、大学などの高等教育機関が果たすべきもので、将来の科学技術者や研究者、官僚や法律家、事業家を対象に、難しい問題に挑戦したり課題を解決したりする力を鍛える役目だ。

だが、この両極の機能の中間にある、コモディティー化した知識やスキルを教えることに関しては、既存の学校・大学よりも塾・予備校のほうがよほど効率的かつ高品質なサービスを提供するノウハウを持っている。そこで、「困難な状況下にある子供たちのケア」「少数精鋭のエリート養成」「その他大勢を対象にした効率的な知識・スキルの習得」という機能別に日本の教育の仕組みも3層構造に組み替えていくべきではないかという。

最近は、教育や医療、経済政策のデータ科学にとどまらず、政治や選挙・民主主義についても積極的な発言が目立つ。夜の時間帯はエール大学での研究・講義や学生の論文指導、新しい教員の採用などに従事し、昼間は自ら創業したスタートアップ、半熟仮想(東京・杉並)の代表として、企業や自治体との協業にエネルギーを注ぐ。怪しげな社名は、まだ熟しきっていないおぼろげな技術で新しい社会を想い描くという意味だそうだ。

一体いつ寝ているのか? 「それが自分でもよくわからない。気づくと打ち合わせを寝すごしたりしています」

およそ常人には理解できない生活だが、本人は淡々とよく通る声で、こう締めくくった。

「日本でテレビでふざけたり、ひろゆきさんとわけのわからないユーチューブ番組を作ったりしつつ、アメリカのアスリート系研究者として論文を書いてソフトウエアを作ったり、ビジネスや政策への実装もやったりすることで、他の人に見えないことが見えるようになるといいなと思っています。目指すのは祝祭と科学の融合ですね」

(ライター 石臥薫子)

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