人的資本開示 従業員のやる気を高める優等生企業は?
ユニポス田中社長に聞く(下)
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ユニポス社長の田中さん
2023年度から上場企業など約4千社による人的資本経営に向けた非財務情報の開示が本格的にスタートする。組織の活性化や改善サービスを手掛けるUnipos(ユニポス)社長の田中弦さんは、先行開示した1千社近い企業の統合報告書などを調査・研究し、「勝手格付け」して話題を呼んでいる。人的資本経営の開示の優等生企業とは。
キリン、女性経営職比率10%から30%へ
――人的資本経営の情報開示の充実度について、田中さんは39社を最高ランク5の格付けとしました。このうち会社の課題や現状、そして目標を詳細に開示しているところはどこでしょうか。
「しっかりと明確な目標数値を掲げている会社も少なくありません。例えばキリンホールディングスは、22年4月時点の女性の経営職比率は10.24%。しかし、ワーキングマザーの活躍を阻む壁を取り除き、女性リーダー研修を積極的に実施することで、30年に30%とする目標数値を明記しています。かつてのビール業界は男性社会のイメージでしたが、キリンも飲食から医療・健康とカバー領域を広げており、女性の活躍の場の創出に注力しているわけです」
――キリンの場合は、社員主導の企業内大学を設置し、従業員エンゲージメントも高まっていますね。情報開示に積極的な企業は、人材確保に対して危機意識の強い会社が少なくないですね。
「少子化が加速度的に進んでいるので、いずれのリーダーも強い危機意識を持っていると思います。男性化粧品で知られるマンダムは、コロナ下で苦境に陥っていました。日本以外では、インドネシアなどアジア市場に基盤を築いていますが、海外でのライバルはP&Gなどグローバル企業が相手となります。同社は自社の課題としてリーダーシップの欠如を上げ、改善に取り組んでいます。第一生命ホールディングスも過去に不祥事があったようですが、そこを乗り越え、従業員エンゲージメントの向上に努めています」