転職市場で引く手あまたのIT人材 新職種も次々と
あしたのマイキャリア――"売り手市場"と言われますが、どの程度なのでしょうか。
「大手企業は採用条件のハードルを下げています。『開発経験2~3年以上、使用言語はJava』と限定していたのを、『開発経験1年以上、使用言語は不問』にするといった具合です」
「IT人材の王道のキャリアパスは、エンジニアとしての実力や経験をもつ人がコンサル会社や事業会社に転職してより上流工程に携わっていくというものですが、流れが変わってきています。以前は、2次請け、3次請けの会社からまず1次請けの会社に転職し、その後社内SE(システムエンジニア)として事業会社へ、あるいはITコンサルタントになるという具合に段階を踏むのが主流でした。ところが、最近ではそれを1つ飛ばし、2次請けの会社から即、事業会社やコンサルティング会社に移るケースが目立ちます。なかには複数内定を手にしてなかなか転職先を決められない人もいるほどです 」
「事業会社としては、外部コンサルタントに払っていたコンサル料が不要になり、エンジニアの採用にコストをかけやすくなったことも積極採用を後押ししていると思います 」
――異業種からIT業界への転職や、未経験者の採用状況はどうでしょうか。
「20代から30代前半の若手であればチャンスはあります。コロナ前から『手に職をつけたい』とIT関連への転職を志望している人は一定数いましたが、新型コロナで事業環境が大きく変わった販売やサービス関連業界などから、IT関連職へ転職する例が増えています。実務未経験者ならプログラミングスクールを卒業している、何かしら資格を持っているなど、目に見える『証明』があると企業に評価されやすいです」
"IT=激務"はもはや過去
――どのような転職理由が多いのですか。
「年代によって異なりますが、若年層はスキルアップを求める傾向があります。 その中でも2パターンあり、1つは技術面。最新の言語や技術を使う、ユーザー数の多いサービスに携わるといった、難易度の高い仕事を経験したいというものです。もう1つは、担当フェーズを変えたいという希望になります。2次請け、3次請けの企業で働いている人が、元請け企業に転職し、顧客と直接コミュニケーションを取りたいというものです。将来的にITコンサルを目指す人は、このパターンでキャリアの軸をつくっていくといいでしょう 」

キャリアコンサルタントの内山駿介さん
「40代以上は家庭を持つ人も多く、『転勤のない職場へ移りたい』など働き方を理由にした転職が増えます。"IT=激務"のイメージを持っている人もいるかもしれませんが、それは過去のもの。激務だったら売り手市場のなかで人材を採用できないですから。労働時間など働き方は改善されていて、限られた時間のなかで高い成果を出すことが求められます」
――転職が決まりやすいのはどのような人ですか。
「自分のスキルを棚卸しし 、整理してアピールできる人が強いです 。逆に苦戦するのはキャリアの軸が定まっていない人。例えばインフラ系とアプリケーション系の職を行ったり来たりしていると、求人企業には強みが見えづらい。様々な経験を持っていても、一番アピールしたいポイントを明確にし、職務経歴書や自己PRを工夫することが必要です。とくにエンジニアは想定されている業務内容が細かい職種です。それに合わせて強みをアピールすると企業も評価しやすいです」