転職市場で引く手あまたのIT人材 新職種も次々と
あしたのマイキャリア注目度が高い新しい3つの職種
――採用が増えている、新しい職種について教えてください。
「3つ挙げます。1つ目はデータサイエンティスト。仕事内容は、大量のデータを集約・整理し、活用方法を分析して提案することです。統計学の知識や、プログラム言語『R』『SAS』を用いた統計分析ソフトの利用経験が求められます。数学的な専門知識が必要になるため、なろうと思っても簡単にはなれない職種です。大学や大学院で統計学を学んでいた人や、メーカーの研究開発部門で統計ツールを使用していた人が向いています。データサイエンティストは転職市場にはまだ少なく、若手エンジニアで、独学でプログラミング言語の『Python(パイソン)』や統計を学んでいる人は転職できる可能性があるでしょう」
「2つ目はSRE(サイト・リライアビリティー・エンジニアリング)。ウェブサービスを持つ会社で、ウェブサイトを安定的に運用させるためのスペシャリストです。平時もそうですが、システム改修やソフトのバージョンアップ時などに『サーバーがダウンする』『表示速度が落ちる』といったリスクが存在します。これらのリスクを回避し、安定稼働するためのディレクションを担当します。『システムだけ』『アプリケーションだけ』ではなく、システム全体を理解している人が求められ、クラウドの利用経験があると評価が高いです」
「3つ目はPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)。プロジェクトマネジャーとともに案件を円滑に回すためのスペシャリストです。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を背景にプロジェクトの数は増えているものの、PM(プロジェクト・マネジメント)業務をできる人材が少なく、サポートとしてPMOが注目されています。若手であれは会議のスケジュール調整や議事録作成から担当しますが、ベテランの人は客先の経営会議に出席するなど経営に近い立場で関わることもあります。PMO専業の会社も増えており、『画面に向き合って技術を究めるよりも、マネジメントのほうが向いているのではないか』という人が多く転職します」
――転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
「今後も売り手市場は続くとみています。事業会社やメーカーもIT投資していく傾向が強まっており、その流れが急に変わることはないでしょう。資格の取得などはプラスになりますが、この売り手市場にあっては、勉強に時間をかけるよりも先に転職活動を 始めてしまったほうが、"うま味"が大きいと思います。自分の市場価値を知りたいという理由で『とりあえず』活動を始め、その結果『思ってもみなかった企業から内定を得られた』ので、転職した人もいます。結果的にうまくいかなくても、選考を受けた企業からフィードバックをもらえるため、この先どのような知識やスキルを身につけるべきかが分かります。自分の強みを整理できる機会にもなるので、得られるものは大きいでしょう」
新卒でキャリアデザインセンターに入社し、「type転職エージェント」事業部に配属。一貫してIT・Web業界を担当し、業界トップクラスのSIerや独自の自社サービスを展開する上場企業、Webベンチャー企業などを幅広く支援。その後キャリアアドバイザーへ転身。企業担当時代の知見を活かし、IT領域のキャリアアドバイザーとして従事している。
(日経転職版・編集部 木村茉莉子)