外資系コンサル→VC→長野自治体 お金以外の幸せある
A.T.カーニー 滝健太郎プリンシパル
キャリアとお金を考える林氏 官の観点と民の観点を併せ持っているということが強みだと思っています。まちづくりの過程でも自身が民間で苦労したからこそ、必要な政策が見えてきて役立っています。
――「グローバル→ローカル」「民→官」と越境を続ける林さんですが、逆に変わっていないものはありますか。
林氏 学生時代から変わっていないものは「イノベーション(革新)を通して、新陳代謝が活発でずっと良くなり続ける社会を作りたい」という思いです。大学院時代にイノベーションの研究をしていたのですが、イノベーションが起きるためには課題やテーマを見つけ、アイデアに落とし込み、社会で実現するという3段階が必要です。これが社会で起き続けるため、自分自身が事業を作り、社会でイノベーションが広がり続けられるように仕組みを作るという意味で、公共政策に注力しています。
イノベーションという軸は一貫
――だから、民も官も大事なのですね。確かに、林さんは「グローバル→ローカル」「民→官」と越境を続けているように見えて、実はイノベーションという軸は一貫しています。何が原体験なのでしょうか。
林氏 留学先のシンガポールでリー・クアンユー元首相が「日本みたいな失敗国家は作らない」という演説をしていたことです。彼はもともと「日本を見習おう」と言っていた人です。日本だけが置き去りにされると思えるような状況で、何とかシンガポールと日本をつなげなければならないと思い、起業が盛んなシンガポールと日本の起業家が国際交流をするNPO(非営利組織)を立ち上げました。キャリアとして最終的に大手企業に就職するかどうかは別にして、どのような立場でも常に新しい価値を作り続ける人が増えれば、世の中がちょっと面白くなるんじゃないか、日本の停滞感も変わっていくんじゃないかと。
――その経験で学んだことで、今に生きていることは何でしょうか。
林氏 お金が介在しない組織をマネジメントすることです。お金をもらっていたら、「給料をもらっているんでしょう」というのが成立してしまうし、指揮命令系統も存在するけれど、お金が介在しない組織マネジメントは難しいんですね。そこをいかに自分にとっても相手にとっても持続的で、やりたい部分が合致する「ウィンウィン」の部分を見いだし、自主性を引き出す形で仕事を割り振るかということを5年以上ずっと考え続けていました。これは小布施町で様々な立場の町民や外部パートナー企業と協働する上で役に立っています。
―――林さんは小布施町以外でも経済産業省でのスタートアップ企業政策や資源エネルギー庁でのクリーンエネルギー政策の仕事など、面白い仕事をいろいろとしています。こういった仕事で声がかかるようになってきたのはなぜでしょうか。