声に出したい映画の名せりふ 人生の機微かみしめる
梶原しげるの「しゃべりテク」「ゴッドファーザー」「スター・ウォーズ」シリーズの名せりふ
「ゴッドファーザー PART II」ではマフィアの首領マイケル・コルレオーネがこう言う。「友を近くに置け、敵はもっと近くに置け」。先代のドンだったマイケルの父から授かった遺訓だ。もともとは中国の兵法家、孫子の教えだという。
ビジネスシーンでは「敵」にあたるのは同じ業界のライバル企業や出世争いの相手だろうか。嫌いな相手とは距離を置きたくなるものだが、それでは情報が入りにくくなってしまう。内心を隠して、関係を保っておくのは、長い目で見て得策になる場合が少なくない。
こういった名せりふをまとめて知りたいなら、和田誠氏の傑作せりふ集「お楽しみはこれからだ」をすすめる。映画監督も務めたほどの映画好きだった著者が選び抜いたせりふが解説付きで収められている。
最近はビジネスの世界で「学び直し」がブームだ。リスキリングとも呼ばれるが、過去に覚えたことから離れる「アンラーン(unlearn)」も、新しい学びに際して必要だという。「スター・ウォーズ」シリーズの中で長老格のジェダイ・マスターであるヨーダはこう言う。「思い込みを捨てなさい(You must unlearn what you have learned.)」。固定観念を離れることの大切さを説いている。学びに限らず、新商品開発やマーケティング立案などでも、セオリーにとらわれないアンラーンの意味は大きい。
弟子を育てる師匠としてのヨーダは結構、厳しいことを言う。沼地に埋まった戦闘機を引き上げろと命じるヨーダに、渋々応じた弟子のルーク・スカイウォーカーには「『試してみる』ではない。やるか、やらないかだ。試しなどない(No! Try not. Do. Or do not.)」と、トレーニングに本気を出すよう求めた。
自分に気合を入れる場合には、役に立ちそうな言葉だ。失敗した場合の逃げ道をあえて用意せず、自分を追い込みたいときに使えるだろう。
とても平易な単語ばかりだから、何度か口に出していれば、自然と覚えてしまいそうだ。ヨーダの重々しい口調をまねしていると、頭にしみ込んでくる気がする。
ヨーダに限らず、映画の名せりふはそれぞれに特徴的な抑揚がついている。同じ場面をリピート再生して、声を乗せていくと、強弱のつけ方も学べる。
どんな名せりふも、平板に発音したのでは、魅力が薄れてしまう。名せりふは名抑揚とワンセットだから、心に響く。筋を追って映画を見ていると、なかなか声の調子にまでは気づきにくいから、せりふ中心に映画を見返す経験は、作品を深く味わううえでも貴重だ。