変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

ただ、日本のようにデフレ感が強い国で暮らしていると、そんなことを言われても多くの人は実感が湧かないでしょう。でも、今や世界はつながっていますから、他国で起きることは対岸の火事では済まされません。少なくともエネルギーや貴金属、食料などの価格高騰の波は日本にも影響が及びます。今のところ日常でそれほどインフレを感じることはないとしても、特にビジネスパーソンは日本だけを見るのではなく、これまで以上に世界で何が起きているのかについて、しっかり目を向けることが大事になってくると思います。

私がちょっと心配なのは、日本は過去30年、物価がほとんど上がっていないので、インフレを実感として知っている人が政治、行政、企業のいずれにもほとんどいないことです。未知の物事が起きると人は慌てます。パニックになって動きが増幅されてしまう可能性がある。そこは要注意だと思います。

コスト増加分は価格転嫁 給料アップも大前提

日本企業はこれまで原材料費が上がっても、そのコスト上昇分を価格に転嫁してきませんでした。それはある意味、素晴らしい経営努力ではありますが、グローバルな感覚では「あり得ない」ことを続けてきたわけです。でも今後、エネルギーや原材料価格が上昇する中で、それを続けていたのではさすがに持たないでしょう。コスト上昇分は今後、製品やサービスの価格に転嫁し、必要な値上げはしていいと思います。値上げによって企業が利益を確保できれば、税金も払えるようになるので国家財政にもプラスです。

もちろん、物価だけ上がるのでは国民はたまったものではありませんから、給料をちゃんと引き上げることは大前提です。給料が上がれば、物価が多少上がっても耐えられるし、人々の購買力も上がってモノやサービスも売れ出すという好循環が生まれます。そういうことを見越し、岸田文雄政権はまず給料を上げる政策を掲げているのでしょうが、さてどうなることか。物価が上がるのと給料が上がるのにタイムラグが生じないようにしてもらいたいものです。

インフレを実感として知っている人がほとんどいないのが心配

インフレを実感として知っている人がほとんどいないのが心配

さて、ここまでインフレという従来の日本にとっての非常識が常識になるのではという話をしてきましたが、コロナ禍をきっかけに今までの常識がもはや常識ではないという現象はさまざまなところで起きています。例えば、米国政府は性別欄に「X」と記載されたパスポートを初めて発給したと発表しました。従来は「F」(female=女性)か「M」(male=男性)しか選べないのが常識でしたが、これからはパスポート保持者本人が「F」か「M」か「X」を選択でき、しかも医学的証明書などは必要ないとのこと。世の中はそういう流れになってきたんですね。

この流れというのはとても興味深いもので、米国では1970年代までパスポートに性別の記載はなかったそうです。それがセキュリティーなど様々な理由から性別記載が求められるようになり、今度は多様性重視の観点から「X」が登場しました。要は今の常識は必ずしも昔の常識でも未来の常識でもなく、「流れ」によって刻々と変わっていくものだということです。

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