ジョブ型人事で出世するには 自ら手上げる姿勢が大事
20代から考える出世戦略(132)
プロが明かす出世のカラクリジョブ型ではチャンスは自分で取りに行くものになる
ジョブ型人事制度に切り替えたある会社で、社長からこんな悩みを聞きました。
「人事部長が『次の定期異動をどうしましょうか』とまじめに相談しに来るんですよ。そうじゃないだろう。『手をあげる仕組み』にしたんだから、意欲ある社員にチャンスを与えるように発想を変えてくれ、と言うんですが、何を言っているのかわからないようで……」
弊社でご支援したこの会社では、これまで典型的なメンバーシップ型の人事の仕組みを導入していました。しかし競争環境が激しくなる中で、新卒を育てるよりも中途採用を増やす方向にシフトしました。若いデジタル人材やプロジェクトマネジメント人材を採用しようとすると、これまでのように、新卒で10年目だから給与はいくら、というような報酬の仕組みは機能しません。そこで、期待する職務に応じて給与額を定め、成果に応じて賞与や昇給で精算する仕組みとして、ジョブ型人事に移行したのです。
改革を進める中で、社長自身が従業員に甘えている部分があることに気づいたところが大きな転換点でした。仲間になれる人材を新卒で雇い、定年まで会社にいさせてあげているという発想に基づき、サービス残業を強いたり、様々な忖度(そんたく)を求めていたりしたことに気づいたのです。
この会社の新しい人事制度では、これまで年齢に応じてほぼ一律だった給与額が、人によって倍も違うようなことも可能にしました。そして、中途採用してきた特別なスキルを持った人だから高い給与にするというわけではなく、社内に在籍している人材にも広くチャンスを与えたのです。
「新しいプロジェクトのリーダーに任用されたら報酬はこの金額」「退任する課長のポストに手を上げて任されたら責任はこれだけで、報酬はこの金額」のような社内転職に近い仕組みも用意しました。
だからこそ、「手をあげる仕組み」にしたはずなのに、と思ったわけです。社長自身が、定期異動のように会社側が社員の責任を決める過去の仕組みに対して否定的に考えているのは明らかですが、人事部長にも社員にもまだ浸透していないようです。
もちろん会社側が社員の育成を計画的に進める、いわゆるタレントマネジメントの仕組みを導入している会社は、メンバーシップ型、ジョブ型を問わず数多くあります。けれども、ジョブ型人事の世界では、手をあげてチャレンジする人を優遇しやすくする仕組みです。だとすれば、これを活用しない手はないはずです。