リスキリングに踊らされるな まず目の前のツール活用
20代から考える出世戦略(120)
プロが明かす出世のカラクリ
イラストはイメージ=PIXTA
人材育成やキャリア開発の世界で、最近よく聞く言葉にリスキリングがあります。学びなおしや能力再開発を意味する言葉で、先進企業や大企業で大規模なリスキリング支援がされているといったメディアでの報道も多数あります。こうした風潮を後押しするかのように、リスキリングで年収を増やそうという働きかけも転職支援企業などで盛んになってきました。ビジネスパーソンとしてこれにどう向き合うべきかを考えてみましょう。
リスキリングとはなにか
リスキリングとは、企業内での人材育成の取り組みです。DX(デジタルトランスフォーメーション)と同じ文脈で語られることが大半であり、プログラミングやAI(人工知能)教育とほぼ同義のようにとらえている方々もいらっしゃいます。
振り返ってみれば、2017年頃には、人生100年時代の学びなおしとして、リカレント教育の重要性が語られていました。私自身も経済産業省の取り組みに対し、立命館大学とともに、地方創生と学びなおしをテーマとした連続型教育を推進してきました。
人生100年時代の学びなおしを提唱されたのは、リンダ・グラットンさんによる「ライフシフト」という書籍でした。そして日本でも内閣府を中心に様々な取り組みが進んだのですが、その際には創造性やクリティカルシンキングなどの本質的な能力の醸成が重要であると言われていました。
しかし本質的能力の醸成には時間がかかるだけでなく、即効性が担保されません。学びなおしのニーズがあると理解されたものの、会社も個人もそこにお金をかけた分だけ取り戻せるかどうかをあやふやに感じていました。そうしてリカレントブームが一段落した段階で、DX対応にはリスキリング、という文脈で語られることが多くなったのです。
つまり、学びなおし対象をデジタル領域に特化させることで、即効性のある育成につなげようとする取り組みだと言えるでしょう。