金もうけよりSDGs 新しい株式会社の定款を変更
ユーグレナ社長 出雲充氏(5)
ビジネスの視点日本は総論賛成・各論反対
そう考えると、東大の秋入学も、ジェンダー平等を実現するために議員や会社役員の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」も、日本では総論賛成・各論反対ですぐに潰されてしまうのですが、やはりやってみるべきではないでしょうか。そもそもこれらの分野で日本は世界の中でビリです。英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「THE世界大学ランキング」では東大でさえ36位(20年)。世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数でも、日本は156カ国中120位(21年)です。起業家精神を国際比較しているグローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査(20年)でも、ほとんどの項目で日本は世界最低水準。現状でビリなのですから、相当思い切ったことをやらない限り状況は改善しません。「外国人の先生・学生が増えすぎた」「男性に対する逆差別になる」「ベンチャー支援もやりすぎると弊害がある」などという議論はビリを脱して世界ベスト10くらいに入ってから始めればいいのです。
さて、ユーグレナの話に戻しましょう。今回の定款変更に反対する方々は異口同音に「SDGsに貢献しながら利益を出して株主に還元するなんて無理だろう」と言いました。読者の方でも疑問を感じている方がいるでしょうね。はっきり言えば、SDGsと金もうけは絶対に両立しません。

SDGsの重要性が認識されるようになった今、大手企業は苦労しているという
大航海時代の東インド会社から始まる株式会社は「もうけてナンボ」の世界ですから、SDGsと金もうけのどちらが大事かといえば、もちろん金もうけです。でもユーグレナは今回、定款でSDGsをど真ん中に据えました。つまり、当社は東インド会社型の株式会社ではなくなったのです。金もうけのためではなく、サステナビリティーのため、未来の人と地球を健康にするために存在する全く新しい形の株式会社になると宣言し、株主にも認められました。
これができたのは、我々がスタートアップ企業だからです。大手企業は東インド会社型の論理でちゃんともうけるような仕組みを作り上げてきたからこそ大手企業になったので、金もうけとSDGsのどちらが大事かと言われれば、金もうけになるのは当たり前です。だからこそ、世界中でSDGsの重要性が認識されるようになった今、とても苦労しているのです。
そのために悲惨な目に遭ったのがフランスの食品大手、ダノンのエマニュエル・ファベール前会長兼最高経営責任者(CEO)です。彼は自社の二酸化炭素(CO2)排出をコストとみなした1株利益の開示や、原材料の地域調達の拡大など画期的な取り組みで、世界のESG(環境・社会・企業統治)経営の先頭を走っていました。つまり、短期的な金もうけよりSDGsを優先するという我々と同じことをやろうとしていたのですが、21年3月、業績不振の責任があるとして解任されました。でも、私は決してファベール氏が間違っていたとは思いません。今の資本市場の欠陥こそが原因であり、そのことが如実に示された例だと考えています。