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SDGsと短期的利益 両立しないのは当たり前

たった1年の業績のみを見て「悪化した」というのが解任理由ですが、そもそもSDGsは長期的な視点に立った取り組みであり、2030年とか50年になって効果が見えてくるものです。それに対し、今の資本市場は1年、あるいは4半期、月単位で利益を出すよう求める極端な短期的な思考に支配されています。でも、そんな短い期間で何が分かるというのでしょうか。SDGsと短期的利益が両立しないのは当たり前なのです。ファベール氏がやろうとしたことは正しかったし、もし未来を担う若い世代が株式の大半を持っていれば、絶対に解任なんかされなかったはずです。地球温暖化が進み、地球が壊れてしまったら、利益を出したところで何の意味もありません。それなのに「株式会社なのだから株主に還元する利益が減ったら責任者を即刻クビにする」というのはナンセンスです。でも、それがまかり通ってしまう。これが今の資本市場の最大の欠点です。

目の前の課題を解決しながら事業をしっかり回し、会社を持続的に成長させることと、未来の人や地球のために会社がどうあるべきかという戦略を練るということを同時並行でやるのはもちろん大変なことです。多くの会社はその責任を社長が担っているのですが、目の前の課題が大変すぎて、未来のことまで考えられないというのが実情ではないでしょうか。そこでユーグレナは今回の定款変更に合わせ、目の前の課題に集中し、業務執行を担うCEOと、中長期の視点から経営戦略を担う社長で役割分担をする次世代型の経営体制に移行しました。代表執行役員CEOの永田暁彦と社長の私がタッグを組みます。私はユーグレナを2030年、50年を生きる子どもたちに恥ずかしくない会社にする責任を負っています。

従来の株式会社とは違う全く新しい株式会社のあり方にチャレンジし、そういう選択肢があり得ることを大手企業や社会全体に向けて発信する。ユーグレナはそんな「ファーストペンギン」でありたいと思っています。

出雲充
1980年広島県生まれ。2002年東大農学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。05年ユーグレナを創業。同年、世界初となる微細藻類「ミドリムシ(学名・ユーグレナ)」の食用屋外大量栽培に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤンググローバルリーダー。第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。経団連審議員会副議長。

(ライター 石臥薫子)

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