中外製薬が内定者に薦める 京セラ稲盛氏の「生き方」
社会人1年目の課題図書「近年はとかく『効率』を求める風潮が強まっていますが、当社の経営層はよく『自分の守備範囲だけがうまくいけば良いということでは視野が狭くなる。利他に徹することで周囲に目配りができるようになり、視野も広がる。その結果として周りから支援してもらえるようになる』と言っています。それが直接関係しているかどうかはわかりませんが、社内でも悩んだり、困ったりしている人がいたら見捨てずに、誰かが必ずサポートするという風土が根付いているように思います」
「働きがいのある会社2022」で初めてトップ3入りした中外製薬だが、「風通しの良さ」や「待遇」「社員の士気」など8つある評価項目のうち、特にスコアが高かったのは「20代成長環境」。社員の口コミでも「年齢、性別に関係なく活躍できる風土がある」といった声が目立つ。高橋さんによると、近年は特にデジタル変革に力をいれており、新規事業や業務改善を含めあらゆる分野で若手からの提案が増えているという。
インターンでも薦めるロジカルシンキングの教科書
「会社の仕事の大半は『提案』ですよね。お客さまへの営業で提案するときも、社内向けの提案でも常に、初めての人が聞いてもパッと理解できるように説明できなくてはなりません。そこで重要になってくるのが、論理的思考。2冊目の『世界一やさしい問題解決の授業』を薦める理由もそこにあります」

「論理的思考は武術や茶道などの『型』と同じで、基本を押さえることが大事」と語る高橋さん
同書は、マッキンゼー・アンド・カンパニーの元コンサルタント、渡辺健介氏が同社で学んだロジカルシンキング・問題解決の考え方を中高生にもわかるように解説した本だ。高橋さんはこれを同社のインターンシップに参加する学生にも薦めている。「たとえ最終的に入社しなくても、参加することで少しでも成長を実感できるように」と練られたプログラムには、市場分析などのワークもある。
「理系の学生は、仮説を立てて実験し論文にまとめる作業を日ごろからしているので論理的思考が身についている人が多いですが、文系の学生はあまり慣れていない印象があります。その分、経済の知識が豊富だったり定性的な分析にはたけていたりするので、お互いに学ぶところがあると思いますが、ワークが終わって『論理的思考を身につけるのにいい本はありますか』と聞かれることも多いんです。論理的思考は武術や茶道などの『型』と同じで、基本を押さえることが大事。ただ、類書は初心者にはわかりにくいものが多い。この本は、出てくる例が身近な話題でイメージしやすく、しかも『型』がしっかり理解できるように書かれているので、初心者には最適だと思います」
論理的に問題解決をする「知力」と、『生き方』が解くポジティブな「考え方」や「利他の精神」という「情」を備えるリーダーになってほしい。同社の推薦図書にはそんな狙いが込められている。
(ライター 石臥薫子)