新型コロナで見えてきた ニッポンの課題と今後の視点
『コロナ制圧 その先の盛衰』
若手リーダーに贈る教科書第1章のワクチン接種で著者が強調するのは、感染抑制の「勝利の方程式」と表現する3点。①効果の高いワクチンの確保②接種場所・要員確保③トップのリーダーシップを挙げ、接種が先行した6カ国に共通する成功要因と指摘します。中でも「『全責任は取る、コロナ禍脱出にはワクチン接種しかない』という強いメッセージを、国民と接種を支える行政組織と医療機関に発信し続けた」(45~46ページ)とし、リーダーシップの重要性を説きます。コロナ対策で批判を浴びた前政権ですが「ワクチン接種にすべてを懸けた」(66ページ)菅前首相の手腕を評価。秋以降の感染者数の減少傾向の要因としてはワクチン接種以外にも「ウイルスの自壊」、「3密」やマスク着用といった国民の感染対策など様々な見方がされていますが、著者は「もちろんコロナ禍はまだ終わっておらず、予断は許さない。しかし、感染収束の方向性は見えてきた。接種し続けること、やはりこれしかないのだ」(67ページ)と言い切ります。
(第1章 出口が見えたコロナ危機 52ページ)
「リベンジ消費」が活性化
ワクチン接種が進み、感染が抑制に向かうなかで、社会をどう正常化させるか。接種先行6カ国や日本を例にとり、経済の回復を読み解こうとするのが第3章です。産業の中でも特に打撃を受けた観光・飲食・娯楽をどう立て直すか。感染者数の減少につれて海外では例えば、米国のレストランの予約状況や旅行予約サイトのデータを挙げ、感染拡大前に近い水準まで回復していると著者は指摘します。「接種の拡大に伴い、モノの消費からサービスの消費へ移行が始まっている。例えば、外食は、今までロックダウンなどで自宅以外での食事が大きく制限されていた分、人々は思う存分外食を堪能し始めている」(126ページ)というのが著者の見立てです。外出自粛で押さえ込んでいた消費が回復し、需要が持ち直す「リベンジ消費」に注目します。
日本国内でも足元で、スタジアムの入場観客数の上限緩和や、地方レベルでも観光支援のため特典をつけたり割引を補助したりといった取り組みが出始めました。国も「Go To トラベル」の再開が検討されています。海外の接種先行国との比較を踏まえ、日本での正常化の時期は2022年春と著者は予測します。
(中略)イギリスでも接種を終えた高齢者から旅行予約を開始したと言われている。日本においても同じような流れで、消費拡大がスタートする。そして、正常化に向けた動きが始まる21年秋半ば以降は本格的に「リベンジ消費」が活性化し、飲食や旅行などのサービス消費が拡大する。
冬の感染不安を乗り越えた22年春には人々の動きが本格化するのではないだろうか。
(第3章 正常化に向けてこれからどうなる、何がいつ起きる 132~133ページ)