新型コロナで見えてきた ニッポンの課題と今後の視点
『コロナ制圧 その先の盛衰』
若手リーダーに贈る教科書日本の課題が新型コロナで顕在化
第4章以降はコロナ禍の影響で個人や企業の行動がどう変わったか、コロナ後はどう変えていかなければならないかという視点で進んでいきます。第4章では女性の自殺者数、就業者数、雇用形態などのデータをもとにコロナの影響を考察しています。その結果、女性は非正規雇用が多くコロナで仕事を失ったり、生活に不安やストレスを感じやすかったりする。また全国一斉休校で子どもが自宅にいることで働きに行けなくなったり、家事の負担が増えたりする。不況に加え、コロナ特有の事情も重なり、コロナショックが女性を直撃したとの見方を示します。
不安定な立場に置かれることで、生活不安から子どもを生むのを控え、それが出生率の低下に拍車をかけさらに少子化が進む。さらに生産年齢人口の減少、人手不足から女性の就業も促進していかなくてはならない。もちろんコロナ前からすでにある構造的な課題ではありますが、コロナをきっかけに顕在化する結果となりました。
コロナ禍の企業への影響に焦点を当てた第5章では、宿泊・飲食といった業種が多い中小企業の資金繰りの厳しさに言及しています。収益力や財務基盤が弱いため、借入金返済の負担が重くのしかかり、いずれは倒産・廃業に追い込まれる企業も出てくる。大胆な企業再編に踏み切るべきだと主張します。第6章ではコロナで注目を集めた企業・行政のデジタル化の後れを取り上げています。個人レベルではマイナンバーの活用、企業間取引の電子化をさらに進める必要があると説きます。
しかし、このもともとあった課題を新型コロナはむき出しにした。今となってはこれらの課題を避けて通ることはできなくなっている。否が応でも課題解決に取り組まざるを得ないのだ。
(第7章「再び輝く日本」となるか「忘れ去られる日本」となるか 234ページ)
コロナ禍は社会・経済に大きな爪痕を残しました。浮かび上がった課題を考え、アフターコロナ時代の対策をどう打つか。考えさせられる一冊です。
◆編集者のひとこと 日本経済新聞出版・桜井 保幸
新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)が猛威を振るい、陽性者数が連日、過去最多を更新していた2021年8月は、本書の校了作業の真っただ中でした。
編集長からは「予定通り本書を出して大丈夫ですか」というメールが届きました。
本書のシナリオは、ワクチン接種の普及により、22年初春には社会経済が正常化するというもの。著者に相談したところ、シナリオ自体は変えないが、不確実な要素もあるので、「22年初春」→「22年春」と微調整を加えることになりました。
ここへきて第五波も峠を超えました。本書の予測通り、22年春のコロナ制圧が現実になることを期待したいものです。